先週のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」。3回目の今回は、「カスハラ対策ソリューション」をとりあげます。
2026年に入ってからも、ITベンダーやBPOベンダーから「カスタマーハラスメント対策ソリューション」のリリースが相次いでいる。
ビーウィズ、法改正見据えた「カスハラ対策サービス」を提供開始
伊藤忠テクノソリューションズ、AIエージェントサービス群『Verint AI Bots』の提供を開始
そして今日(2月2日)、ソフトバンクがかねてより開発を進めていた「SoftVoice」を正式リリースし、記者会見も行った。
https://callcenter-japan.com/article/8635/1/
機能については上記リンクの記事に記載しているが、端的にまとめると(1)AIによる音質変換、(2)ノイズキャンセリング、(3)警告メッセージ、(4)通話録音機能――を主要機能とするソリューションだ。とくに目玉となっているのが(1)音質変換で、顧客の発言(内容)をそのままで、「怖くない声」に変換する技術である。

記者会見では、顧客役に役者を招いたデモも行われた。激昂した発言がどこまでソフトになるのか、会見では6種類の声音が披露された。
実は一昨年になるが、同社でデモを体験したことがある。その時点では、正直、「これだと顧客の“温度感”が伝わらず、ちぐはぐな対応になりそう」と感じた記憶が残っている。むしろ、顧客に対して「警告」を録音音声(あるいは合成音声)で発話できる(3)の機能の方が、オペレータを守るという意味では有用なのでは、と発言した記憶がある。しかし今回のデモでは、「これならば顧客の感情の温度感をそこまで損なわずにオペレータも感じることができるのでは」という印象が残った。「顧客の(喜怒哀楽の)温度感」と、「オペレータが恐怖を感じる声のトーンの抑制」を絶妙なバランスで両立できていると思う。会見で実際に質問したが、「運用している企業においてコミュニケーション品質(モニタリングスコアやAHTなど)に問題が生じたという報告はない」(AIプラットフォーム開発本部 SaaS企画準備室 担当部長 中谷敏之氏)という。価格も、ID10個から月額税抜き5万円、以降1IDにつき月額5000円と導入もリーズナブルだ(申し込みから2カ月間の無料トライアルも実施)。また、各PCのソフトフォンと連携するタイプなので、複雑なインテグレーションも不要。導入のハードルはかなり低そうだ。
もうひとつ気になったのは、同ソリューションの機能ではなく、企業に求められる「カスハラ対応」における今後の顧客対応方針へのインパクトだ。
2025年6月、企業の「カスハラ対応」を義務化する法律が公布された。公布から1年半以内の施行予定ということは、2026年中に「カスハラから従業員を守る体制」を整えることが義務化されることになる。怠ると、安全配慮義務違反となり、オペレータから訴訟されるリスクが発生する。記者会見で中谷氏は「加害者はユーザー。でも、裁かれるのは会社」とそのリスクを語ったが、まさにその通りだ。こうなると、「有人による顧客対応そのものがリスク」と考える経営者が出てきてもおかしくはない。その場合、リスクを回避するために、可能な限り「人での対応」を減らすことを考えるはずだ。
その手段はすでにある。生成AIによるチャットボットやボイスボットである。コールセンターにおけるAI活用の主戦場は「要約によるACW短縮」で、ハルシネーションを重く見る傾向が強く、コミュニケーションそのものへの活用は立ち遅れている。しかし、AIによるハルシネーションリスクと、カスハラがもたらす訴訟とレピュテーションリスクを天秤にかけ、どちらを重く見るか――人件費の高騰という要素も加わると、後者を重く見て「自動化」にまい進する経営者が多くなる可能性は高いと推察できる。
「カスハラ対策の義務化」と、それに伴う訴訟リスクの高まりが、現在、やや二の足を踏んでいるように見える「顧客対応への生成AI活用」にアクセルの役割を果たす――いかにも『予見できそうな近未来』ではないだろうか。
しかし、その前に「苦情を入れずに済むサービスやWebサイトの設計」を強化することが条件で、それナシに対応自動化を図ることは、顧客満足や顧客体験の著しい低下を招く。すでに、多くのWebサービスにおいて「なるべく電話やメールを顧客にさせない」ようなWebサイトのUIを採用していることは、否定しようのない事実だ。自己解決率を少しでも高める努力をしたうえでの施策ならば妥当性が高いが、多くは単に電話番号を記載せず、かつWebフォームがなかなか登場しない作りになっているだけ。FAQやチャットボットに誘導はするが、それではなかなか解決できないケースも多い。こうした顧客体験を軽視・無視したUIがカスハラを生むリスクにつながっていることもまた、経営者や顧客接点のマネジメントは念頭に入れるべきといえそうだ。(矢島)
2026年02月02日 18時53分 公開
2026年02月02日 18時53分 更新