コラム
第110回
SaaS事業は「4年目の浮気現象」に要注意!
流行歌にならって「3年目の浮気ぐらい多めにみろよ」と言って家に入れてもらえなかった、わたちゃんです。35年以上経て今は夫婦円満です。
対象企業やブランドに対する顧客ロイヤルティを構造化し、アンケートで定量化して考察するコンサルティング事業を行っていると、業界で共通的に見える現象を発見することがあります。
その中のひとつが「法人向けSaaS事業における4年目の浮気現象」です。SaaS事業はサブスクリプションモデルを採用しており、顧客側には初期導入コストを抑えて導入しやすく、必要なくなればすぐに解約できるメリットがあります。一方、SaaS事業者は、セールス活動のみならず離反防止の取り組みが、経営的に重要となるのです。そんなSaaS事業者のクライアントに、継続利用意向のアンケートを行い、継続利用年数による違いを比較しました。
最新の調査である2023年は、継続利用で4年目のクライアントのロイヤルティスコアが飛び抜けて低いことが分かりました。この結果は、4年前のセールス活動に問題があり、「はじめから離反しそうな顧客を多く獲得した」可能性を感じる方もいると思います。そこで本スコアを経年で比較してみたところ、同じクライアントであっても4年目を迎えるときにロイヤルティスコアが低くなることがわかったのです。継続利用意向が下がる「4年目の浮気現象」が見られました。ただし、このうち多くは「心理的離反」であって、実際には契約が継続されるケースも多いことが明らかになりました。その要因は、プロダクトや各顧客接点に対して、4年目のクライアントは満足度が下がることがわかりました。
根本原因はさらなる調査をしないと解明できませんが、(1)契約から数年はしっかりサポートするが4年目ぐらいから目が行き届かなくなる、(2)導入担当者が異動となり新任者に引き継がれてプロダクトに対する愛着度合いが下がる、などが推察されます。本SaaS事業者では、4年目に入ったクライアントに対しては営業的なアプローチも含めて、満足度の低い顧客接点を重点的に取り組むことで、契約的な離反の先行指標になる心理的離反防止策を打つことになりました。
こうした現象は他のSaaS事業者からも共感を多く得られ、業界特有の現象である可能性もあると見ています。
ということで、我が家では40年目のカミさんからの三行半(みくだりはん)現象を回避するために、事前防止策を練っているところですが、分析が甘くて効果的な策が浮かんでこないのです。
2024年03月20日 00時00分 公開
2024年03月20日 00時00分 更新