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「配車BPO」が解決する地方の社会課題  “移動”を司る司令塔としての役割

電脳交通コミュニケーションセンターの挑戦

同社のBPOビジネスは、一般的な「席数×時間」モデルとは異なる。ベースになるのは着信単価だ。理由は明快で、「(地方では)売上げが1日につき1台あたり1回しか立たない」ケースもあって、固定費として課金しにくいからだ。従って受託費用は会社ごとに大きく異なり、「月に数万円程度のお客様から数百万円程度までかなり幅広い」(中西氏)という。
体制は、直営拠点が徳島県と岡山県の2拠点で、人数は合わせて約100人。全国数カ所の委託先パートナーも存在している。
受電量は月間平均20万件以上。繁閑差が大きく、ピークは12月と8月。閑散期との差は約1.5倍で、「繁忙期の着信数は30万件に上る」(中西氏)という。

一般的なコールセンターにおいて、この規模で月間10万件超に対応するのは難しい。同社センターのオペレーションの最大の特徴は、「平均応対時間(AHT)が約40秒」である点だ。中西氏は「定型的な挨拶から入る大手BPOベンダーの運用では、おそらく2分程度かかる。タクシーを呼ぶ顧客は、“(オペレータと)2分話したい”のではなく、“早く車を確保したい”。ここがポイント」と説明する。

密度が上がる「例外処理」
AI時代のBPOの活躍領域

典型的なオペレータの応対は次のようなものだ。
「いつもの場所でよろしいですか。はい、じゃあ6号車が向かいます。以上です」
この短さは“雑”ではない。むしろ、顧客の要望を反映した結果だ。重視すべきは会話の丁寧さではなく、「いつもの1台」をどこまで理解しているかという点だ。
「この場合の“いつもの”には、家の前か手前の角か、マンションの裏か表か、到着時に電話するか、希望ドライバーは誰か——といった情報まで含まれている。これらを共有情報として蓄積し、誰が出ても一定の対応ができるようにしている」(中西氏)。
同社センターの最大の武器は、マニュアル化が難しい、“地域・顧客・供給状況”の三重の変動を捌き切る「現場力」にあるといえそうだ。
同社にとっては、タクシーアプリで対応できる一般的な受託はターゲットではなく、最後まで残るであろう、“人の差配が必要な領域”に集中した戦略といえる。たとえば、都市圏におけるアプリ経由のオーダーは自動配車が基本だが、前記したよように地方では稼働している車両が限られ、ときには「断る」判断が必要になる。中西氏は、「ここは人が判断、差配しないといけない」と強調する。
さまざまなビジネスにおいて、自動化が進むほどこうした“例外処理”の密度は上がる。中西氏は、「あらゆる業種で、コンタクトセンターはその例外処理を引き受ける場所になっていくのでは」と分析。これはタクシー配車のみならず、すべての顧客対応業務に通じる考え方といえそうだ。
同社のビジネス傾向について、中西氏は「獲得社数は右肩上がりで増えているが、着信(電話配車)は年々減っている」と説明する。全体としては電話は減る。しかしゼロには絶対にならない。最後に残るのは難しい電話——同社におけるスマホ非保有、位置不明、要望が複雑、供給が薄い——濃縮された“難案件”に対応するコンタクトセンター、とくにBPOビジネスは、今後、件数ではなく例外密度で設計する産業になるという見方もできそうだ。

テクノロジーが進むほど、社会は滑らかになるどころか、便利さを享受する層とついていくことが困難な「境界」が目立ち始める。地方交通はその典型であり、電脳交通の取り組みは、その境界線上において「AIが普及しても残る仕事」を、最初からビジネスとして設計した例といえる。

編集部作成による電脳交通のBPOビジネス概要
編集部作成による電脳交通のBPOビジネス概要
 


 

2026年03月23日 14時08分 公開

2026年03月23日 14時08分 更新

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