コラム
第133回
小学生の頃は足が早かった、わたちゃんです。運動会の徒競走では、1位を取ろうものなら、観戦に来ていた近所のお母さんたちから大絶賛され、鼻高々でした。ところが、中学生になって学区が広がると、世界は一変します。僕の1位の歴史はあえなく終了し、ただの「運動神経がまぁまぁの子ども」になってしまいました。
この「1位から普通」への転落劇は、今思うと、ビジネスにおける競争原理の縮図だった気がします。
去年10月、ドバイに視察旅行に行ったのですが、この都市はまさに「1位」の戦略を国策として徹底しているお手本だと感じました。砂漠に突如現れた近代都市ドバイは、トリップアドバイザーの「人気の観光地」で3年連続世界第1位。経済特区としての魅力もさることながら、観光客の誘致においても「世界一」という絶対的なブランドで人々を惹きつけているのです。
ビジネスやマーケティングにおいて、市場で「2位以下」は記憶に残りにくいものです。コモディティ化が進む現代では、消費者に選ばれるためには「何か突出した要素」が必要不可欠です。ドバイの戦略の核心は、「尖った1位」を徹底的に作り、その上で「都市としての安心感」を担保している点です。
彼らが用意するのは、世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」のような圧倒的な物理的アイコンだけではありません。世界最大級のショッピングモール「ドバイ・モール」や、未来都市と旧市街を同時に見せる「ドバイ・フレーム」といった、視覚的・体験的な「世界一」を次々と打ち出すことで、「ここでは最高の体験ができる」という期待値を旅行者に植え付けています。
さらに印象的だったのは、「世界一綺麗なスターバックス」と話題の店舗。公式なギネス認定ではなくても、豪華な内装からそのように言われることで、その都市の品質水準やホスピタリティの高さまでをも印象づけているのです。これは、「1位と認識されること」自体が最大のマーケティング効果を生むという教訓です。
そして、ドバイの成功は周辺諸国にも影響を与え、中東地域全体で「世界一」を競う競争を生み出しています。例えば、隣国のアブダビは世界的な文化施設であるルーブル美術館の分館を誘致し、サウジアラビアは未来都市「NEOM」計画で世界を驚かせようとしています。彼らもまた、ドバイが示した「世界一(オンリーワン)が注目を集め、富を呼び込む」というビジネスモデルを真似て、国家ブランドを構築し始めています。
日本では、2009年の「事業仕分け」で参院議員の蓮舫さんが放った「2位じゃダメなんでしょうか?」という一言が象徴するように、日本の社会や組織では「平均点を上げる」「弱者を助ける」といった平等性や安定性が重視される傾向があります。もちろん、それは素晴らしい美徳ですが、グローバル競争において国力を考えるなら、「尖った強みをどこまで伸ばせるか」も重要じゃないかなあ。

2026年02月20日 00時00分 公開
2026年02月20日 00時00分 更新