わたちゃんのかすたま~えくすぺりえんす 第132回

2026年2月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

渡部弘毅

コラム

第132回

AIエージェント同士で物事が決まる未来への期待と不安

 ちょっと高価な欲しいモノを買う時には、自分が直接カミさんに言うのは避けている、わたちゃんです。自分で「これ欲しい」と言うと、だいたい「ダメ」の一点張り。なので、カミさんと仲のいい奥様友達に密かに依頼し、「旦那さん、あれ欲しいみたいよ。いいモノだから買ってあげたら?」とアドバイスしてもらうのです。そうすると、これが不思議とすんなりOKが出るのです。

 この「他人の力を借りる」戦略、実は今後のビジネス交渉のあり方を象徴しているかもしれません。今、テクノロジーの世界で急速に進んでいるのが、AIエージェント(自律型代理人)の進化です。

 従来のビジネスでは、人間同士がロジックと感情を織り交ぜながら交渉してきました。しかし、AIエージェントが浸透すると、やがては各社のAIエージェントが、人間が介入しない領域で、目標最適化のための交渉を行う時代が到来します。

 このエージェント同士の交渉が優れているのは、感情や個人的なバイアスが入らないという点です。人間は、気分や過去の経緯、好き嫌いで非合理な判断を下しがちですが、AIエージェントはただひたすら、設定されたゴールを達成するために、最も効率的かつ合理的な方法を選びます。

 AIエージェント同士で物事が決まる未来の兆候は、リアルエージェントサービスにも見られます。例えば、労働市場を例にとると、従業員の退職をサポートする退職代行サービス「モームリ」と、企業側が従業員を引き止めるために利用する退職引き止めサービス「イテクレヤ」といったものが登場しています。これらは、人間の感情的なやり取りを排し、「退職したい」「引き止めたい」という利害の対立を、代行業者という「ヒューマンエージェント」が処理するものです。

 これがAIエージェントに置き換われば、個人と企業がそれぞれのAIエージェントを使い、交渉の条件(退職時期、有給消化、退職金の上乗せなど)をデータに基づき、各々のリスクも考慮に入れながら、最適解で合意することも可能になるでしょう。感情論を排除し、ロジックとデータだけで物事が決まる世界です。

 AIエージェントの時代は、交渉の効率を飛躍的に高めてくれるでしょう。しかし、忘れてはいけないのが、ヒューマンエージェントもAIエージェントも、あくまで「代理人」だということです。

 ということで、僕の「ヒューマンエージェント」戦略も、うまくいくときはいいのですが、ある日、カミさんが気づいてしまって、「なんで直接言わないの?」と問い詰められて、事態が過去最悪に悪化してしまいました。エージェント頼りにして、本音で向き合う姿勢をサボってしまうのも良くないようです。AI時代も、最後に責任を取るのは人間ですからね!

図 人間 vs AIエージェント
図 人間 vs AIエージェント
PROFILE
ISラボ 代表
渡部弘毅
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
著書『ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』(2023年11月、リックテレコム刊)
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す

2026年01月20日 00時00分 公開

2026年01月20日 00時00分 更新

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