Editor's Eye 

CS News Watch(8) ローカルルールに対応するAIエージェント

ベテラン社員の暗黙知の形式知化を促す

先週のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」。8回目の今回は、「ローカルルールに対応するAIエージェント」を取り上げます。

ゴール(目的)の達成に向けて自律的に稼働する「AIエージェント」。コールセンターに限らず、さまざまなビジネスシーンでの活用が模索されているが、実務で使いこなすための課題は数多い。
その最たるファクターが「状況に応じた柔軟性」「ローカルルールの存在」だ。
企業内には、さまざまなルールが存在する。就業規則やプライバシーポリシーなどの全社共通のものはもちろん、部署ごと、対応チャネルごとにルールが存在することも珍しくない。これらをそのままAIエージェント化すると、ビジネスルールに基づく制御がコントロールできなくなり、意図しない挙動を起こしたり、最悪の場合はハルシネーションの発生などを招く可能性が高まる。
生成AIに詳しい識者は、「ローカルルールは可能な限り廃止する」ことを薦めているが、長年、定着してきたルールの変更は一朝一夕には難しい。
柔軟性を持ち、かつ堅牢なビジネスロジックに基づく挙動を実現するAIエージェントを目指してリリースされたのが、セールスフォース・ジャパンの「Agentforce360」に搭載された「Agent Script」と「Agentforce Builder」だ。

Agentforceは、同社が提供するさまざまなクラウドソリューションのなかで、「最も成長の早いソリューション」とされている。先般、実施されたメディア向け説明会で、同社の専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸 篤氏は、「第3四半期の決算でAgentforceの成約件数が対前四半期50%増の1万8500社に達し、PoCから本番運用に移行するクライアントも同70%増」と現状を説明。同社ユーザーのAIシフトは着々と進みつつある。説明会では、Agent ScriptとAgentforce Builderの開発環境について説明。「自然言語で処理したいプロセスを入力するだけで、信頼性の高い提案をしてくれる。エージェントの回答の根拠も可視化される」などのメリットを訴求した。また、ナレッジとして活用されるデータには、「Data360」の機能として、さまざまなビジネスアプリケーションやデータレイクがAgentforceに対してコンテキストを提供する機能も紹介された。このさまざまなITしソリューションをまたいだ稼働こそが、AIエージェントのAIエージェントたる所以といえる。

「総合病院の受付」
ありがちな課題を解消する

そして後日、Agentforceの最新事例としてリリースされたのが、愛知県名古屋市の大同病院の診療予約対応だ。

総合病院では、診療科ごとに予約に関するルールが異なるなど、受付段階で複雑な対応にならざる得ない事例が数多い。とくに複数の診療科をまたいだ検査や診察においては、エスカレーションや保留の発生は当たり前で、顧客満足の低下はもちろん、生産性の低下も避けられない。

大同病院では、Agentforceの導入によって、患者がWebサイトなどから問い合わせた際、AIエージェントが症状や要望を聞き取り、ナレッジと診療科ごとのルールに基づいて適切な診療科を選定し、予約完了までを自動で行う。あわせて電子カルテや予約システム、Web問診などのデータの統合管理、診療前後の患者へのメッセージ配信や案内によるフォローアップを行うとしている。Agentforceの持つ複数のルールやナレッジをベースに回答を最適化する機能を活かした事例といえる。

ローカルルールのビジネスロジック化
難題の解決がもたらすAI活用の可能性

ローカルルールのビジネスロジック化が実現できれば、AIエージェントの適用範囲が大きく広がる可能性は高い。また、運用を通じてルールの統合が進む可能性も出てくる。

また、生成AI活用の狙いとして、「ベテラン社員が保有する暗黙知の形式知化」を挙げる識者やITベンダーは多い。企業におけるローカルルールの多くは、ベテランの暗黙知に基づいて形成されており、こうしたベストプラクティスの積み重ねと応用が広がることを期待したい。(矢島)

AIエージェントによるローカルルール対応
AIエージェントによるローカルルール対応

 

2026年03月10日 15時06分 公開

2026年03月10日 15時06分 更新

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