わたちゃんのかすたま~えくすぺりえんす 第131回

2026年1月号 <わたちゃんのかすたま〜えくすぺりえんす>

渡部弘毅

コラム

第131回

「シャドーAI」 悩ましい“隠し事”の最適なマネジメントは?

 バブル全盛期の若い頃、カミさんには徹夜仕事だと言って飲み歩いていた、わたちゃんです。でも、翌日帰宅するとたいがい機嫌が悪いので、おそらく気づいていたんだと思います。しかし、「知らぬフリ」してその場をやり過ごすことが重要な振る舞いでした。

 さて、企業でも同じように「知らぬフリ」ができない隠し事が蔓延しています。それが、最近話題のシャドーAIです。これは、IT部門の承認や管理がないまま、従業員が業務で個人的にAIツール(ChatGPTなどの生成AI)を利用する現象を指します。

 「シャドーIT」は昔からありましたが、AIは次元が違います。なぜなら、単なるセキュリティリスクだけでなく、利用者が企業の機密情報や顧客データをLLMに入力すると、それが意図せずAIの学習データに使われてしまうリスクがあるからです。情報漏洩やコンプライアンス違反、AI特有のハルシネーションによる信用失墜など、企業を脅かす課題は深刻です。

 しかし、シャドーAIを単なる「脅威」として禁止一辺倒で捉えるのは、視野が狭いかもしれません。

 なぜ従業員が隠れてAIを使うのか? それは、「現場主導での業務効率化への強い意欲」の現れであり、現在の社内IT環境やガバナンス体制では、そのスピードに対応できていないというギャップの現れだからです。シャドーAIは、リスクであると同時に、現場が渇望している機能を示す「創造性の芽」なのです。

 禁止によって利用が地下に潜ると、企業の監視の目から完全に消え、リスクはかえって増大します。

 企業は、シャドーAIを「禁止」ではなく「可視化」し、「公式化」へ導くべきです。例えば、

①可視化と分析:従業員がどのAIツールで、どのような業務(資料作成、コーディング、翻訳など)を効率化しているか、意欲に着目してヒアリングする。

②ガイドラインの整備:機密情報を扱わない、情報源を必ず確認するなど、最低限のルールを設けて利用を許容する。

③公式ツール化:現場で最も利用効果の高いツールや機能を特定し、セキュリティ対策を施した上で、全社的な公式ツールとして採用・提供する。

 つまり、リスク回避に特化した従来のAIガバナンスが「守りの管理」だとすれば、シャドーAIを活かすアプローチは「攻めのガバナンス」です。現場のデジタルリテラシー向上という名の「隠された機会」を活かせば、企業は一気に生産性を向上させることができます。

 ということで、30年以上たった今は、シャドー徹夜飲みする元気は無くなったのですが、シャドー鮨屋、シャドー株式投資、シャドーサブスク動画サービス、シャドービジネスクラスなど、ちょいちょい隠れて楽しんでます。まあ、きっとカミさんも同じようにシャドーしているはずなので、企業と違って、こちらは可視化せず、お互い詮索しないことが夫婦円満なのです。

図 シャドーAIに対する守りと攻め
図 シャドーAIに対する守りと攻め
PROFILE
ISラボ 代表
渡部弘毅
職業:顧客経験価値にこだわる戦略立案&業務改革コンサルタント
過去勤めたことのある企業:日本ユニシス、日本IBM、日本テレネット
著書『ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』(2023年11月、リックテレコム刊)
週末の過ごし方:
<ケース1>隅田川あたりをぶらぶら散歩して浅草で飲んだくれたあと銭湯で汗を流す
<ケース2>スポーツジムでヨガレッスンを受けて汗を流す

2025年12月20日 00時00分 公開

2025年12月20日 00時00分 更新

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