生成AIは、「業務に溶け込むIT」である。その活用には、提供側(ベンダーやSI、あるいは情報システム部門)だけでなく、利用者である事業部門にも一定以上のリテラシーが求められる。
とはいえ、日進月歩で進化する生成AIに関する情報やノウハウをすべてのビジネスパーソン(とくにナレッジワーカー)が等しくキャッチアップすることは不可能に近い。どうしても知識やリテラシーの格差は生じる。むしろ、その格差による影響はこれまでのITの比ではない。ノーコード/ローコードでさまざまな機能開発ができるといえども、「Claude CodeやCodex(OpenAI)などを駆使して業務改善をリードできる層」と、「与えられた環境を使うだけの層」では、個人のパフォーマンスも組織への還元(貢献)レベルも異なってくる。前者の「積極活用する/活用を推進する層」が、事業部門(現場)に存在するか否かは今後の経営に大きな影響をもたらすことになるだろう。
また、仮に意欲の高い社員が存在したとしても、彼/彼女らによる「シャドーAI」のリスクが顕在化しつつある。会社(部門)が手をこまねいている間に、個人でAIを有償契約し、それを仕事に使う。組織としてルールが定まっていないので、場合によっては「入力してはいけない情報」を入力する可能性は極めて高い。
事業会社でもBPOベンダーでも、現場人材のAIリテラシーの向上は不可欠な取り組みだが、社内に正しい使い方を教える人材が不足している傾向は否めない。そこで、役に立ちそうなのが「検定」だ。
さまざまな検定が登場しているが、主なものとして以下の4つを挙げる。
| 資格名 | 主催団体 | 主な対象層 | 生成AIに関するカバー領域 | 試験方式(2026年現在) |
| AIエージェント・ストラテジスト | 一般社団法人AICX協会 | マネジメント層、DX推進担当、業務改革担当 | AIエージェント活用、BPR、組織・ROI設計など | オンライン試験(第1回は2026年6月中旬) |
| G検定(ジェネラリスト検定) | 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA) | ビジネスパーソン、マネジメント層 | AI全般の教養に加え、生成AIの基礎、法規制・倫理など | オンライン試験(年6回)会場試験(年3回) |
| 生成AIパスポート | 一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA) | 全ビジネスパーソン、AI初心者 | 生成AIリスク管理、プロンプト、RAG、AI新法など | オンライン試験(IBT方式、2026年より年5回) |
| ITパスポート | 独立行政法人情報処理推進機構(IPA) | 新入社員、全ビジネスパーソン | IT全般の基礎教養の一環として、生成AIの仕組み・リスクなど | CBT方式(全国会場で通年随時実施) |
取得を目指すことで、リスクを含めた生成AIに関する知識を体得し、自社業務に活かすべきポイントを学ぶことができる。
今年から開始するAICX協会のAIエージェント・ストラテジストは試験開始前にウェイティングリストが2300名を突破。日本ディープラーニング協会のG検定は、すでに今年、2回の検定が行われ、合わせて約1万6000名が合格した。合格率は概ね65〜80%程度で推移し、累計合格者数は18万人を超えている。
生成AI導入は、一過性のムーブメントではない。しかし、現段階では期待値が先行し、成果が伴っていないという見方も強い。PwCジャパンが実施した調査では、2025年春の段階で「期待を大きく上回っている」という回答が10%、「やや期待を下回る」が25%、「期待とはかけ離れた結果になった」が2%となっている。AICX協会では、「AI活用が個人の工夫にとどまり、業務プロセスや組織の仕組みまで再設計できていないという課題がある」と分析。「組織的な活用レベルの向上をもたらすための検定という位置づけ」となっている。
それぞれの検定で、対象とする人材や難易度が異なる。自社業務に必要なAI人材像を見定めたうえで絞り込むことはもちろんだが、複数の社員に異なる検定を受験させ、組織にフィードバックするといった手法も検討したいところだ。
2026年05月22日 13時58分 公開
2026年05月22日 13時58分 更新