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CS News Watch(15) カスタマーサクセスにおけるAI活用

バーチャレクス・コンサルティング調査からの考察

直近のCS関連ニュースのなかから、興味・関心を惹いたものを独自にピックアップする「CS News Watch」。今回は、「カスタマーサクセス業務でのAI活用」について取り上げます。

カスタマーサポート(コール/コンタクトセンター)領域で加速する生成AI活用。それでは、カスタマーサクセス領域ではどのような状況なのだろうか。

バーチャレクス・コンサルティングは毎年、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施、今年もその結果を公開している。そのなかで、3月末に発表された「AI実装状況」に関するデータを検証する。

同調査は、2026年3月、インターネット調査で実施。20歳から65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)4万5571人を対象としている。
「カスタマーサクセスについて知っている」と回答した5014人に対し、「勤務先での組織としてのAI導入・活用段階」を聞いた結果、「すでに本格導入し、複数の業務・部門で活用している」が26.5%、「一部の業務・部門で本格活用している」が29.6%、合わせると56.1%が実務でのAI活用フェーズに入っている。

バーチャレクス・コンサルティング「2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」

一方で「カスタマーサクセスに取り組んでいない企業」と回答した3377人については「すでに本格導入し、複数の業務・部門で活用している」が7.9%、「一部の業務・部門で本格活用している」が14.3%で大きな差が生じている。
バーチャレクス・コンサルティングでは、「顧客の成功にコミットするカスタマーサクセス推進企業ほど、テクノロジーを活用した業務高度化への投資意欲が高い傾向がある」と分析している。
またカスタマーサクセスに取り組む企業は、その多くがITソリューションを提供するSaaS企業であり、昨今は自社ソリューションにAIを組み込む傾向が強い。結果、自然にAIを活用する傾向は強くなるはずだ。

顧客対応領域におけるAI活用について聞いた結果を見ると、カスタマーサクセス取り組み企業では、「業務の大部分でAIを活用しており顧客対応や分析・予測が高度に自動化されている」が19.3%、「一部の顧客対応でAIを活用している」が43.1%で、計62.4%が顧客対応の現場でAIを実際に活用している。

バーチャレクス・コンサルティング「2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」

カスタマーサクセスに取り組んでいない企業では、この「活用している」割合の合計が23.3%にとどまり、ここでも大きな差が生じている。ここでいう顧客対応は、チャットボットやFAQなど、カスタマーサポート業務の範疇も含まれているようだ。

どのような業務でAI技術が活用されているかについては、「業務アシスタント(文章作成、要約、翻訳、業務効率化など)」が16.6%、「顧客対応(チャットボット・FAQ自動化)」が14.8%、「データ分析・予測(需要予測、数値解析など)」が14.2%となっている。この項目は「コールセンター白書」などに収録されているコールセンター(カスタマーサポート)と大きな差はない。

バーチャレクス・コンサルティング「2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」(クリックして拡大可能)
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ITリテラシーが高いゆえの「AI疲れ」に要注意

カスタマーサクセス領域においても、生成AI活用は着実に進行していることがわかる調査結果といえるが、IT活用の方法はカスタマーサポートやコールセンターとはやや異なる印象が強い。
カスタマーサクセス業務の従事者(CSM:カスタマーサクセス・マネージャー)は、全体的にITリテラシーが高い傾向がある。また、企業がChatGPTやGemini、Claudeなどのエンタープライズプランを契約、配布されたライセンスを活用して「自分(あるいは属しているチーム)のやり方」で生産性向上を図っている傾向が見受けられる。一方、コールセンターの場合、雇用属性の違いもあって、こうした運用は比較的、少数派だ。多くは専用のITツールや、既存のアプリケーションに組み込まれた生成AI機能を活用している。

CSMは、コールセンターのオペレータやSVと異なり、顧客(クライアント企業)に対して能動的に「提案」を行うケースが多い。そのため、業務アシスタント機能、データ分析・予測、レポート作成などの業務での利用価値は極めて高いと推察される。今後、さらに活用レベルは高まることが確実だが、留意すべきは「AI疲れ」ともいうべき現象だ。
これらの業務は、コールセンターで事例の多いチャットボットや対応要約などと比べると完全自動化が難しいものばかりで、「人手がまったく不要になる」という性質の業務ではない。従って生成AIがもたらす最大の成果とは、「1件あたりに要している時間の短縮」といえる。
これまで実践してきた提案資料の作成などを省力化・効率化できた結果の「余裕」を何に使うか――同じような業務が単純に増える(担当クライアントが増える)だけならば、個人も組織も著しく疲弊する可能性が高い。時間的・精神的余裕をさらなる付加価値向上のために活用するマネジメントが求められそうだ。

2026年05月12日 17時01分 公開

2026年05月12日 17時01分 更新

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