本誌記事 インタビュー テックタッチ 古森 茂幹 氏

インタビュー

カスタマーサクセスに必要な3要素を説く!
「データ」「テクノロジー」「プロセス」の現状と課題

日本ヒューレット・パッカード、グローバルにおけるカスタマーサクセス(CS)の第一人者のセールスフォース・ジャパンを経て、テックタッチの社外取締役に就任した古森茂幹氏。CSに必要な「顧客第一」主義はビジネスの根幹であり、企業の成長を牽引する原動力と強調する。

古森 茂幹 氏
テックタッチ
社外取締役
古森 茂幹
PROFILE
1982年、日本ヒューレット・パッカード入社。2014年、代表取締役副社長執行役員に就任。2015年4月、セールスフォース・ドットコム(当時)副社長に就任。エンタープライズ事業部門のリーダーとして大手企業、関東圏以外の地域における事業を統括。2024年より取締役副会長、2025年2月に退任。同年3月、テックタッチ社外取締役に就任。

──経歴からお話しください。

古森 日本ヒューレット・パッカードに入社し、法人営業部門を中心にキャリアを積んできました。その後、取締役常務執行役員、エンタープライズ事業の営業統括を経て、2014年には副社長執行役員を務めました。セールスフォース・ジャパンには2015年、副社長として参画し、エンタープライズ市場を中心に事業推進してきました。2024年からは取締役副会長に就任し、2025年2月まで務めました。

 この間、目の当たりにしてきたのが「ITの民主化」です。SaaS、クラウドの登場と普及によってプライシングまで含めて、よりエンドユーザーのニーズを捉えながら変化してきました。CSは、その結果として生まれたコンセプトだと考えています。

──CSの本質的な役割とは。

古森 大切なのは、データ、テクノロジー、プロセスの3つの要素からのアプローチです。ITに関しては、かつては買う側と売る側の意識の違いが大きかった。究極のカタチは、使った分だけ支払うユーティリティプライシングの実現だと思いますが、今もなおライセンス単位の課金です。これでは、使っていない人の分まで支払うことになります。ですから、売る側はその原因の、魅力がないのか、使い方が分からないのか、使いたくないのかなどをデータから検証して、アプローチの方法を変えていく必要があります。テクノロジーとは、そういったお客様の情報を可視化する技術を指し、CSマネージャーの業務がより創造的になり、顧客との関係性が深まる可能性が高まるので、最も重要な要素です。

 プロセスとは、お客様の成功に向けて、同じ方向を見ようとすることです。この考え方は浸透しつつあるものの、情報の流れには課題があります。営業、インサイドセールス、CS、サポートと組織が縦割りになっているケースが多く、お客様の情報が横に流れ、サイロをまたぐ。タイムラグも発生すればミスも発生しやすい。組織形態に絶対の正解はありませんが、この点は考慮に入れるべきです。

テックタッチで実現したい
CSの理想像

──テックタッチで、ご経験をどう生かしたいですか。

古森 これまでのキャリアで一貫してきたのは、「顧客第一」の考え方です。私は、テクノロジーが社会に与えるインパクトを現場で実感してきました。テックタッチが提供するDAPは、その考え方を体現するプロダクトです。ユーザーがシステムを正しく使いこなし、成果を出すことにフォーカスしている。私が重視してきた「テクノロジーを顧客の事業成長に結びつける」思想と一致しています。

──テックタッチのソリューションが、CSのコンセプトを具現化しているということですか。

古森 テックタッチは、導入したシステムやアプリケーションを、エンドユーザーに定着させるためのAI型のDAPを提供しています。操作ガイドやナビゲーションを画面上に表示することで、ユーザーは迷わず操作できます。また、利用データをもとにユーザーの行動を可視化し、課題のある箇所に対して個別に支援を届けられるのも大きな特徴です。

 現在、800万(MAU換算)を超えるユーザーに利用され、導入実績も豊富です。システムを「導入する」から「使いこなす」フェーズへと導くことで、企業のDX推進を加速させる役割を担っています。企業文化として「お客様の成功を第一に考える」姿勢も感じます。CSを単なる機能や部門ではなく、企業の文化として根付かせようとしている。AIとの融合にも積極的に取り組んでいて、AX(AIトランスフォーメーション)の推進に貢献できるポテンシャルを感じています。

テックタッチの画面イメージ
テックタッチの画面イメージ。Webシステムやサイト上に操作ガイドを表示して操作性を向上させる

──テックタッチで実現したいCS像をお聞かせください。

古森 今後、ますますAIが進化して、とくにサポートの自動化は進んでいくはずです。その結果、CSマネージャーには、より創造的な業務が不可欠になります。こうした変化の中で、人とテクノロジーが共創しながら、お客様の事業成長に伴走する形こそが、理想的なCSのあり方だと思っています。テックタッチが掲げる「システム導入のその先へ」というビジョンを、実際の現場に落とし込み、日本企業のDX推進と人材のアップスキルに貢献していきたい考えです。

──CSに携わる人へのメッセージをお願いします。

古森 CSは、CS部門だけの仕事ではなく、全員の仕事だという気持ちと実践が大切です。お客様とお会いする機会が多い営業も、いわゆるバックオフィスといわれる会社のインフラをサポートしている部門も全員がお客様と等距離でお客様の成功をご支援していくことが肝要です。CSの本質は、顧客の成長と企業の成長を一致させることにあります。“売って終わり”ではなく、“(製品やサービスが)使われて、成果が出るまでしっかりと寄り添う体制”が求められます。テクノロジーは、人の創造性や関係性を高めるためのツールであるという考えに基づき、顧客と共に歩む企業づくりを支援していきたいと思っています。

(月刊「コールセンタージャパン」2025年6月号 掲載)

2025年05月20日 00時00分 公開

2025年05月20日 00時00分 更新

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