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オリックス生命保険

2025年8月号 <ITの選び方&使い方>

オリックス生命保険

生成AIで「ロープレ研修」を自動化
効果と生産性を高める実践環境の構築

POINTSイメージ

今月のPOINTS!

システム概要
CA(同社オペレータ呼称)のロールプレイング研修ツールとして、エクサウィザーズのAIロールプレイングサービス『exaBase ロープレ』を導入。2025年5月から新人の初期研修に活用している。

選び方のポイント
生成AIの活用により、テキストによる指示で柔軟にシナリオを作成できる点に加え、正社員が9割で研修の繁閑があるため、利用時間に応じた従量課金制でコストを最適化できる点を評価した。

使い方のポイント
約3カ月半かけて、「払い込み方法の変更」のシナリオ1本を徹底して作りこんで会話・評価の精度を高めるとともに、運用ノウハウを蓄積した。さらに、顧客役となるAIアバター(ペルソナ)は多様なお客様のタイプへの対応経験を積むという観点で、3パターン用意し、実際の応対に近いロープレ環境を構築。結果、実施回数の増加とともに、スキルアップのペースも向上。初期研修の短縮につながる見込みだ。また、ロープレにおいて顧客役を担うシニアCAの工数の4割削減につながる見込み。

 デジタルチャネルの拡充、AIによる応対自動化の導入に伴い、電話応対は、複雑かつ高度な問い合わせが中心になりつつある。そのため、初期教育は長期化傾向にあり、既存のオペレータへの研修機会の確保も求められている。

 オリックス生命保険のコンタクトセンターは、電話応対品質の維持・向上を目的として研修体制の最適化を図るなかで、ロールプレイング研修の自動化に着手した。

 ロールプレイング研修は、CA(コンタクトセンターアテンダント:同社オペレータ呼称)が短期間で実践的な経験を積める一方、教育を担う側の業務負荷が高い。カスタマーサービス部 東京コンタクトセンター長の松本将敬氏は、「手厚く実施しようとすると電話応対業務の要員が手薄になり、接続品質の低下を招く可能性が高かった」と自動化の背景を話す。また、同センターは、約9割が正社員雇用のため、初期研修が4、5月に集中することもあり、教育を担当するシニアCAのリソースをこれまで以上に割くことは現実的ではなかった。

左から、カスタマーサービス部 デジタルサービスチームの山下順加氏、アシスタントマネジャーの山田翔太氏、同部 東京コンタクトセンター長の松本将敬氏
左から、カスタマーサービス部 デジタルサービスチームの山下順加氏、アシスタントマネジャーの山田翔太氏、同部 東京コンタクトセンター長の松本将敬氏

アバターを3パターン用意
実践に近い環境の実現

 「対人での実施」の再現性の観点で、生成AIを活用したロールプレイングツールに着目。複数のツールを検討し、AIアバターとロールプレイングできる『exaBase ロープレ』(エクサウィザーズ)に決定した(画像)。

 導入・運用を担当する同部 デジタルサービスチームの山下順加氏は、「研修効果の高いシナリオを実現するには、応対知識に加え、最新の応対の傾向を反映することが不可欠です。テンプレートを基に、テキストによる指示文で柔軟にシナリオ追加・変更が可能な点を評価しました」と強調する。また、研修の繁閑がある同社にとって、利用時間ベースの従量課金制でコスト最適化が見込める点も、導入を後押しした要素といえる。

 2025年1月に導入しロールプレイングシナリオの作成とシステムの実証に着手。同チームアシスタントマネジャーの山田翔太氏は、「まず、初期研修向けのシナリオ1本を作りこみ、運用ノウハウの蓄積から始めました」と振り返る。

 具体的には、3カ月半かけて、「(保険料の)払い込み方法の変更」のうち基本的な応対パターンのシナリオの会話を作成。実際の応対の状況に近い環境の構築、自動評価の精度向上を図った。

 実際の応対に近い環境を構築するため、「ノーマル」「関西弁」「横柄で意地悪」の3パターンのAIアバター(ペルソナ)を用意。「多様なお客様への対応経験を積むことで、スムーズに着台できるようになると考えました」(山田氏)。

 自動評価の精度向上は、音声認識の調整と評価の精度の両面で実施した。「会話の評価に影響する要素として、商品名や専門用語の認識精度の向上とともに、テキスト化する際の表記の指定など、細かく調整していきました」(山下氏)。

 また、従来のロールプレイングにおける評価項目を踏襲。評価がぶれないよう、シニアCAによる“耳合わせ”を徹底して調整した。

『exaBase ロープレ』の評価画面
『exaBase ロープレ』の評価画面

新卒の実施回数は増加
シニアCAは負荷軽減

 25年5月、新卒採用者の初期研修において、11本のシナリオを用意してAIロールプレイングの運用を開始。センターの繁閑に関係なく、空き時間を使って進捗状況に応じて実施できるようになったことで、新卒1人あたりの回数は増加。さらに、AIによる評価・フィードバック内容と合わせて、音声認識テキストで自身の応対の振り返りができるため、スキルアップのペースも向上、初期研修の短縮につながる見込みだ。一方、シニアCAによるロープレの実施時間は従来より約40%の工数削減を見込んでいる。

 今後は、既存のCA、350人を対象とした研修やセルフチェック用に利用を拡大する方針。CAを対象に実施したアンケートで追加ニーズのあったリーズンを優先して、シナリオの充実を図る。松本氏は、「5年以内に、コンタクトリーズンの80%をカバーする計画です」と展望を述べる。並行してAIアバターのパターンの拡充など、研修効果を高めるための調整・工夫を継続する。

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会員限定2025年07月20日 00時00分 公開

2025年07月20日 00時00分 更新

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