コラム
第2回
作家の井伏鱒二先生は、二日酔いになると、ぬるい風呂に入っていたという。そして、少しずつ熱くしていって、たっぷりと汗を流す。そうすると、どんな二日酔いもさっぱりと直ってしまうのだという。
ある人が、そのあとどうなさるのかと聞くと、先生は、妙なことを聞くな、という顔で、「決まっているじゃないですか。また飲み始めるんですよ」と、答えたそうだ。
大作家の真似はとてもできないが、強烈なクレームを受けた後は、ちょっとした二日酔いのようになる。つまり、“後を引く”のである。
二日酔い対策に似て、こちらにも、人それぞれにオマジナイがある。廊下を散歩してみる、お茶を汲んでくる、愛煙家なら喫煙所に向かう、などが一般的だ。離席したまま、なかなか帰ってこない人は、さすがに心配になる。
筆者が勤めるコールセンターでは、数人がひとつのシマでオペレーションをしている。誰かが強烈なクレームを受けると、すかさず、ジョークを展開し、気分転換を図る。ブラックジョークであるほど効果的だ。
例えば、某企業との長時間対応を終えた先輩が、思わず天を仰いで「あー!なんて会社だ!」と嘆息した。すかさず私は声をかけた。「ウチの会社のこと言っちゃダメですよ」。気がつくと職場中が笑いころげていた。
会員限定2025年02月20日 00時00分 公開
2025年02月20日 00時00分 更新