実践編
第7回最終回
最終回となる今回はカスハラ対策のチェッククリストについて説明する。各社においてカスハラ対策の進捗度をチェックしていただきたい。またACAPにおける調査結果と合わせて見ていただくことで自社の立ち位置を知り、今後の取り組みの参考になるはずだ。なお、調査結果は、一団体における結果であるため参考値として捉えていただきたい。
ACAP(消費者関連専門家会議)が実施した調査結果からは、不当要求や著しい迷惑行為を受けた件数について「受けていない」という回答は6.1%に留まり、多くの企業が不当要求や著しい迷惑行為といった被害を受けていることが示されている。対策としては、72.4%の企業が「エスカレーション対応などの準備ができている」としているが、カスハラに対する方針の作成(実施中33.8%)や社外に発信(実施中12.0%)を実施している企業は一部に留まり、今後の課題といえる(図)。
まずは項目ごとにチェックしていただきたい。その上で回答の割合と照らし合わせ、遅れている項目から取り組みを開始してほしい。半年後、1年後に再度チェックしていただき、対策の進捗度合いを確認することもできる。優先順位を決めて、1年後にはすべての項目が実施できていることが理想だ。
方針やマニュアルの作成手順やポイントについては、この連載で取り上げてきたが、作成するだけでなく、その内容が具体的、実践的であり全社で効果的に活用できるものでなければいけない。とくにマニュアルに関しては、状況やトレンドに合わせて更新を繰り返して充実させていきたい。
ここでは、3番目の質問項目にある「社内からの相談に対する部署または担当者を設置している」を深掘りして説明する。
カスタマーハラスメント対策としての「相談窓口」の設置は極めて重要だ。45.3%が「実施中」とあるが、次に示す内容に至るまでの役割が果たせているか、本当に全社のカスタマーハラスメント対策窓口として機能しているかを確認してほしい。
コールセンターに限らず、一次応対者が不当・悪質クレームに対した場合、次の4段階の組織対応が必要となる。
第1段階:一次応対者の上司や上長による支援や対応などエスカレーション対応をする立場の方による組織対応
第2段階:「相談窓口」による支援。調査の質問項目3番目の「社内からの相談に対する部署または担当者」を指す。不当・悪質クレームなどに関して、上司や上長が相談する全社横断的な相談窓口となる
第3段階:第2段階の「相談窓口」を支援する本社や関連する支援部門の協力
第4段階:弁護士や警備員、警察など外部機関との連携
第2段階の「相談窓口」は、一次応対者の上司や上長を支援する立場であり、場合によっては第3段階の本社や関連する支援部門の協力を仰ぎ組織方針を出す立場となる。第2段階と第3段階の対応を組織化して「カスタマーハラスメント対策室」を設けている企業もある。
カスタマーハラスント対策は組織対応が重要と繰り返し伝えてきたが、この組織対応のカナメとなるのが「相談窓口」だ。私自身は、企業に所属していた際、長くこの立場にいたが、不当・悪質クレームに対した際、いかに迅速に支援部門を集め、組織としての対応方針を定めるかに注力してきた。対応方針が決まった後は急ぐことなく、場合によってはあえて時間をかけて顧客に対応方針をお伝えしていくこともある。
もちろん、一次応対者や上司、上長だけでなく、相談窓口も決して対応担当者1人にしてはいけない。当然ながら、組織による支援が欠かせない。
最期に、5つのカスハラ対応の極意を記載する。
・カスハラ対応とは「相談窓口」を要とした組織対応である
・組織対応は不当・悪質クレームの段階に入ったときから始める
・組織で判断すべきことは対応の「中断」または「中止」である
・対応を中止する際には「正当な理由」と「努力した姿勢」を示す
・管理者はメンバーファーストの考えに立って行動する
7回にわたる連載を最後までお読みいただいたことに深く謝意を示し、連載を終了する。
会員限定2025年04月20日 00時00分 公開
2025年04月20日 00時00分 更新
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