コラム
第15回
ミラノ・コルティナ冬季五輪が閉幕した。さほど熱心な観客でもなかったが、閉会式で大会のプレーバックが映し出された時、静かな感動があった。勝・敗者は結果に過ぎない。そこには、出場した誰もが最高のパフォーマンスを目指した姿があった。
今大会では、残念なことに、2勝7敗に終わったカーリング日本代表、スキージャンプ混合団体ポーランド代表など、結果を出せなかった選手に対する心ない批判があった。残念に思う気持ちや、さまざまな考えがあることはわかる。だが、五輪の舞台に立つだけでも、必死で勝ち抜いた結果である。「行き過ぎた批判」をしてはならない。
自分で競技をしていない人たちの心ない声に、まるで自分が電話応対で暴言を浴びた時のように胸が痛んだ。
出場選手にとっては、もちろん試合に勝つことが目標だ。一方で、競技者としては、勝利も敗北も、ひとつひとつがすべて次世代の選手たちに引き継がれていく。カーリング日本代表は、ここ2大会連続で、世界最終予選でようやく出場権を勝ち取った。最終予選以前に世界選手権のポイントで出場を決め、入念な調整を行うためには、国内で競技の活性化や競技人口増が欠かせない。それは、今の選手・チームの努力が、次の世代に繋がってこそ、成し得ることだ。ちなみに現在のカーリングの選手数は約3000人。愛好者を含めても、競技人口はわずか6000人程度と言われている。
コンタクトセンターもまた、「行き過ぎた批判」を浴びる場である。企業は、人々の役に立とうと商品を提供することで、社会や経済に貢献しようとしているのだが、カスタマーハラスメントをする人には、そういう面は汲んでもらえない。
企業がすべて正しいとは言わない。製品やサービスにはミスも不具合もある。しかし、「行き過ぎた批判」まで浴びる必要はない。プレーヤーでもないのに選手たちを批判した観客も許せないし、そのうえ企業の窓口で受けているオペレータは、クレーマー側と同じ、消費者の1人なのだから。
現在、コンタクトセンターで働く人はどのくらいいるのだろう。日本コンタクトセンター協会が公表している資料によれば、2024年の会員企業70社の従業員数は合計287288人とある。コンタクトセンターは人員の入れ替わりが激しいので、実際の就労数は数倍に達する可能性がある。
企業の窓口が集約され、「コールセンター」が生まれ始めたのは1980年代だった。いまや数十万人が働くようになった業界だが、カスタマーハラスメント対策にいたっては、まだ端緒についたばかりだ。
ソニー創設者の1人である盛田昭夫氏は、アメリカ駐在となり、車を買おうとした後輩に対して「いまの連中は贅沢だ」と嫌味を言った社員に、「あとから来る若者が、君たちよりいい生活ができなければ恥と思え」と一喝したという。
ビジネスもスポーツも、その場面では勝つことが目標でいい。だが、取り組みとは、その成果を、次世代へと手渡していくことだ。いま、カスタマーハラスメント対策に取り組むことは、次の世代に、この仕事をよりよい環境に整えて引き継ぐためなのだ。
会員限定2026年03月20日 00時00分 公開
2026年03月20日 00時00分 更新
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