コラム
第10回
インターネットに接続する機器の世帯保有率が、2023年は97.4%(令和6年版情報通信白書)にも達したそうだ。ただ、その際の調査で、総務省は回答を「郵送又はオンラインにより回収」したとある。郵送もあるとはいえ、受け取りようによっては、よく出来たジョークのような味わいがある。
ようやく暑さがやわらぎ、東京近郊ではIT関連展示のシーズンを迎えた。コンタクトセンター関連では、自動応答の可能性が、より提案されるだろう。ただ、自動応答といっても範疇が広いので、もう少し細かく分類してみる。
①人工無能:事前に登録したシナリオに沿って質問に回答する。チャットボットやFAQなど、顧客が回答を選択し、知能は搭載していない
②RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):定型的な作業に対し、あらかじめ定義されたルールに基づいて自動的に意思決定や処理をする。ルール管理を手軽かつ柔軟にできる
③AIエージェント:AI(人工知能)によってある程度の判断力を持つ。シンプルな内容なら一部を自律的に実行可能
④エージェント型AI:人の代理として行動する。一貫した思考や記憶を与えられており、AI同士でも連携できる
コンタクトセンターでの自動応答、あるいはAI技術導入の背景には、業務効率、オペレータ負担の軽減、人件費や教育コストの削減への要求がある。とはいえ、カスタマーハラスメント対策の観点から見ると、導入にはまだクリアすべき課題が多い。
シンプルな応対の自動化で、人件費や教育費は削減できるが、オペレータから経験を積む機会を奪ってしまう。彼らはいきなり高度な応対を要求されることになる。
また、顧客応対はケース・バイ・ケースである。自動化で応対品質を均一化し、属人化を防ぐことはできる。しかし、スクリプトやマニュアルに頼った対応が、かえって二次苦情を生むケースを多々見てきた。
コンタクトセンターは、いわば「企業のコンシェルジュ」なのである。お客様のさまざまな困りごとや要求に臨機応変に対応し、顧客満足度を高める。その過程にプロフェッショナルなサービスをこめて提供するところに本質がある。
問題解決にのみ比重を置いてAI化が進むと、CXは味気なくならないだろうか。ある程度、自動化が進んだら、逆に差別化をはかるため、人間的で細やかなサービスの提供をめざして、AIをあえて使わない企業も出てこないとも限らない。
パソコンと人間はどこか似ているという指摘がある。若者は、最新の処理能力を持つが、ソフトウエアや経験が不足。年配者は、ソフトウエアは豊富だが、ハードウエアはすでに旧式化している、というものだ。それをAIがすべて埋められるだろうか。
こういうジョークがある。
「このコンピュータは、間違った答えを出しても、どこで間違えたのか、わからないようにしてあるんだね?」
「はい。ウチは官公庁御用達ですから」
自動応答の行き着く先が「お役所仕事」にならないといいのだが。
2025年10月20日 00時00分 公開
2025年10月20日 00時00分 更新