コラム
第8回
今夏はことに暑い。そこで当連載のタイトルにちなんで、怪談話を一席。「化け物使い」という古典落語である。
とにかく人使いの荒いご隠居さんがいた。皆が辞めていく中で、1人だけ残っていた使用人も、ご隠居さんが引っ越そうとした先が「化け物屋敷」との噂を聞いて、ついに「人使いが荒いのは耐えられるが、化け物には耐えられません。暇を取らせていただきます」と辞めてしまった。
身の回りが不便になったご隠居さんだが、その夜に「一つ目小僧」が現れたのをいいことに、さんざんこきつかったあげく「明日はもっと早く来い」と言いつけた。翌日は「大入道」が出たから力仕事をさせる。その翌日は、「のっぺらぼう」の女性だったから、「やっぱり女性がいると、家の中が華やかでいいやね」と裁縫をやらせる始末。
4日目に狸がやってきた。毎晩訪れていた化け物は、この狸のしわざだったのだ。それが「暇を取らせてほしい」と言い出したので、なぜかと聞くと、狸が答えた。「こう化け物使いが荒くちゃ、耐えられません」。困ったご隠居さんである。
コンタクトセンターを訪れる人は、この「ご隠居世代」が多い。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、2025年には65歳以上の人口が30%に到達する。さらに「団塊の世代」800万人の全員が75歳以上の後期高齢者となる。高齢化ばかりではない。そのうち約8割はお元気との統計もある。また、コロナ禍で出かけられなかった期間に「スマホの使い方を覚えた」と、多くがアンケートに答えている。
60歳以上の約6割が、コンタクトセンターへ電話をかける前に、まずWebで自己解決を図ろうとしているという調査もある。そこで、コンタクトセンター側でFAQの充実やマルチチャネル対応、AI活用などによって、CXを充実させ、自己解決への導線を作ろうという考え方が生まれている。
だが、それで本当に大丈夫だろうか。
シニア世代が利用するインターネットサービスは(1)メール/LINE、(2)動画サイト、(3)通信販売がほとんど。つまり、一部のサービスには慣れたものの、IT自体に習熟したわけではなさそうだ。「自己解決を図る」とは「窓口の電話番号を調べる」程度かもしれない。顧客対応の現場の実感では、「ネットだけでは心細い、電話で直接答えを聞きたい」というシニア顧客が、まだまだ多い。
シニア世代は、まだアクティブなのに世間から離れ、コミュニケーションに飢えている。上司を務めていたから、上からモノを言うことに慣れており、パワハラが当たり前の世代だから、声を大きくして怒鳴れば他人は言うことを聞くと思っている人が多い。
つまりカスタマーハラスメントの自覚はなく、コミュニケーションとして、クレームを言いたいのである。内容を確認しようとすると「わからないのは、頭が悪いからだ」などと浴びせる。「自分は親切にも、モノを教えてやっているのだ」と、まるで暴言に感謝しろと言わんばかりである。
これでは、「こうオペレータ使いが荒くちゃ、耐えられません」と言いたくもなろう。ああ、すっかり身の毛もよだつ怪談話になってしまった。くわばら、くわばら。
会員限定2025年08月20日 00時00分 公開
2025年08月20日 00時00分 更新