コラム
第7回
外国人観光客が増えている。観光地に向かえば、乗客に日本人はわずか。都心の通勤ラッシュにも観光地からの大荷物。ようやく東京駅に降り立つと、すでに駅の出入口に外国人が集合している。それにつれて、外国人観光客のマナーの悪さが指摘されることも増えた。
「昭和」の時代、欧米を恐怖に陥れた「ノーキョー」という言葉をご存じだろうか。
前回の東京五輪(1964年)の後、海外渡航制限が解除され、70年代から海外旅行に出かける人が増えた。なかでも農家の人々が先陣を切った。農地改革で安価に土地を所有した農家の人たちは、一般的なサラリーマンより裕福になっていたし、農業協同組合(農協)は最も早い時期に海外旅行ツアーを組んでいたからだ。
しかし、時代はまだ海外旅行の黎明期。習慣が西側諸国では異なることを知らなかった「ノーキョー」絡みのトラブルは避けられなかった。
飛行機の中で酔っ払って大声で話し、下品なことを言って客室乗務員にセクハラ。レストランでは大声で箸を頼み、ホテルではパジャマ姿で廊下やロビーに現れ、ベッドに慣れず寝具を床に敷いた。いわゆる「慰安旅行」をそのまま欧米に持ち込んだのである。当時の欧米にとっては、とんだ「文化的衝突」だった。
いま、日本に来る中国人や韓国人のマナーが悪いという声を聞くが、それは当時の日本人にそっくりではないだろうか。つまり、「文化の違い」が主因なのである。
コンタクトセンターで言われる言葉に「団塊の世代」問題がある。今年、後期高齢者になることによる「2025年」問題ではなく、「団塊の世代」が退職した2007年ごろからカスタマー・ハラスメントが急増している問題である。
この世代の特徴として、自分のキャリアを誇って威圧する「スジ論型」と、自分がモノを教えてやるという「世直し型」が多い。しかし、すでに過去のものとなったキャリアや教えを、ご自身の承認欲求のために言われたところで、オペレーターは困惑するだけ。その反応に、高齢のため怒りのコントロールが難しくなって声を荒げるという構図である。もちろん、それも今ではハラスメント行為である。
これも、「文化の違い」が理解されていないからではないだろうか。欧米を旅する日本人に最も多く寄せられたのはマナーに関する批判だったが、カスタマー・ハラスメントもまた、マナー違反に端を発する問題だ。
今思えば、前回の大阪万博が開かれた1970年、コメの生産量が消費量を上回った。政府は新規開田禁止、政府米買入限度の設定と自主流通米制度の導入などの生産調整と減反政策に舵を切った。地主になっていた農家は、農地を転用したり、売却したりする。その結果、食料自給率が下がったことが、現在起きている「令和のコメ騒動」の遠因になった。
残念ながら、後手に回ったいま、政府の施策と同様、「団塊の世代」問題にも効果的な解決策は見当たらない。
何のことはない、2020年代になって、すべてが繰り返しているのである。
会員限定2025年07月20日 00時00分 公開
2025年07月20日 00時00分 更新
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