コラム
第6回
「ウワサされることより悪いことがひとつだけあります。それはウワサされなくなることです」と言ったのは、作家のオスカー・ワイルドである。小説「ドリアン・グレイの肖像」の1節である。うまいことを言うものだと思ったが、商品を扱う身としては、「クレームを受けるより、クレームを受けなくなることが悪い」と思うことは、にわかには難しい。
だが、クレームのない商品とはどういうものか。それは、完璧で非の打ちどころがない商品か、誰も使っていない商品ということになるだろう。
完璧な商品はありえない。誰一人として同じ人間ではない以上、受け手によって視点が違うからである。それに、もし本当に非の打ちどころがなければ、その商品には進歩の余地がないではないか。
「何か問題がないか」と投げかけて、「何も問題は起きていません」と答えた部下に対し、「問題がないということは、問題ではないか?」と指摘した「経営の神様」松下幸之助さんではないが、商品の市場投入が挑戦である限り、クレームは避けられない、ということになる。問題は、クレームからカスタマーハラスメントが発生しやすいことにある。
では、何がカスタマーハラスメントを生む土壌になっているのか。
会員限定2025年06月20日 00時00分 公開
2025年06月20日 00時00分 更新