この状況下では、冒頭で記したように新人や若手メンバーが成長しない、必要以上に苦労する、孤独感に苛む、一体感が醸成されない、優秀なメンバーの思いがけない離職、新しいチャレンジができない、そしてマネージャーの負荷のみが増大し疲弊するーーなどの問題が浮上しやすい。
そこで、武藤氏は図3にあるような取り組みを推奨する。
その上で、武藤氏は「まずは“個として立つ”と“心の距離が近い”の2つの取組みを進め、一定レベルの成果が見られたら応用編として“ここがいい”について検討すべき」と説明する。「リモートワークで成果を出せるようになった社員、自ら仕掛けるなどの自律性の高い仕事をできる人は、“会社や上司は自分のために何をしてくれているのだろう?”という疑問を抱えやすくなります。結果、退職につながりやすい。上司や会社のおかげで成果を挙げられていると考えられる環境つくりが“ここがいい”の取り組みのポイント」と強調した。
コールセンターに限らず、多くの日本企業のリモートワークは、コロナ禍において「半ば強制的に開始させられた」ものだ。ほぼ準備なしでスタート――つまり最低限のインフラやルールを用意しただけの状態で現在もリモートを続けようとしている傾向が否めない。コールセンターの場合はとくに、労働集約かつナレッジの参照や顧客情報の取り扱いといった情報セキュリティ問題、そしてストレスフルな業務で孤独感が大敵という事情もあって、その程度の体制では耐えられず、出社回帰傾向が他業務よりも強い可能性が高い。
武藤氏は、「ナレッジなどの情報セキュリティについては、それはIT投資やDX化の要素が大きいし、すでにある程度は解消できているはず。とくにコールセンターの場合は、ナレッジのデジタル化は他部署より先行しているのでは」と指摘したうえで、「議論すべき点は2つ。技術的に難しいのか、心理的に難しいのかを分けること。そしてもう1点は、リモートできないという会社にできていないと感じる“業務の因数分解”を進めることです」と強調する。
コロナ禍での在宅センター構築の際、多くの識者が指摘していたのが「リモートでできる業務/コンタクトリーズンと、できないものを明確に分けて、それぞれのコンタクトが的確にルーティング(分配)されるように設計・運用する」というものだった。これらに加え、武藤氏は「例えば、コールセンターの多くは、オペレータはデュアルモニタでこっちは顧客情報、こっちはナレッジという形で業務していますが、これをどのくらい小さなデバイスでできるか、という実験を重ねた企業もありました」という。こうした細い業務の内容分析が成否を分けるポイントといえる。
採用事情に詳しい専門家のほとんどは、「リモート可能か否かが応募数に与える影響は極めて大きい」と強調する。とはいえ、100%リモートセンターは現実的な選択ではない。最近の主流となっている「ハイブリッド型」を追求すべきだ。BCPに備えるという意味で多くのセンター運営企業はリモートワークができる体制は残しているが、準備もルールも未成熟なままでは、「急激」「一斉」「大規模」に進めると不備が生じ、顧客に迷惑をかけてロイヤルティを下げる品質やパフォーマンス低下も懸念される。日常的にリモートワークをローテーション化するなどの体制作りが必要で、そのためにも「3つの『こ』」をはじめとしたマネジメントの転換が必要といえる。
2025年10月01日 14時51分 公開
2025年10月01日 14時51分 更新