人とAIの“バディ”が実現する 「ヒアリング」の最適化

2025年6月号 <特集>

特集

人とAIの“バディ”が実現する
「ヒアリング」の
最適化

Part.1 <提言>

オペレータにつなぐ前に用件を特定する!
現場を助ける“エフォートレス”な前さばき

コンタクトリーズンの把握は、顧客対応の前提であり、基礎でもある。それを担うオペレータには、顧客の属性やリテラシーに合わせた言葉の選択、顔の見えない顧客の感情まで察するなど、卓越したヒアリング力が求められる。人手不足の現在、それはもはや「ないものねだり」に近い。生成AI、チャットボットやボイスボットといったIT活用で顧客対応の“前さばき”を自動化するポイントを検証する。

 コンタクトセンターにおける顧客対応の第一歩は、「用件(コンタクトリーズン)の把握」だ。その最適化には、IVRの導入が唯一無二に近い手段で、さもなければ「何でも対応できるマルチスキルのオペレータ」を揃えるくらいしか方法はなかった。採用難、人手不足が加速する現在、後者はもはや現実的ではない。

 ところが近年、コンタクトチャネルが多様化。問い合わせの起点がWebに移行したことで、多様化の一途をたどるコンタクトリーズンを把握する方法が変化しつつある。それが生成AIをはじめとしたITソリューションと、オペレータ(人)が“バディ”を組んだ新しいコミュニケーションだ()。

図 用件確認のフローは進化している
図 用件確認のフローは進化している

Part.2 <ケーススタディ>

生産性が上がれば利便性も向上する!
4社のIT活用事例に見る「CX&EX革命」

Part.2では、「ITと人」を適材適所で組み合わせエフォートレスな顧客対応を追求する4社の事例を紹介する。4社に共通するのは、徹底的な顧客視点でサービスを設計し、ときには部門をまたぐ姿勢だ。企業側の都合を押し付けるのではなく、顧客にとっての利便性追求と現場の負担減を両立している。組織間連携やAI活用などさまざまなアプローチで、セルフサポートの強化や導線改善に取り組む4社の挑戦を検証する。

CASE STUDY 1
東京ガス

センターとWeb担当部門が組む強力バディ
セルフサポート強化、チャネル最適化に貢献

 Webとコール(電話)の内容をすべて把握し、一連の顧客体験を総合的に検証できる人材が存在する企業は少ない。顧客とインタラクティブなやり取りを担うコールセンターと、Webコンテンツを構築する部署もまた、「バディ」の関係が求められる。

 東京ガスは2022年、コンタクトセンターの応答率改善とWebサポートの見直しを図る目的で組織間連携に着手した。具体的には、コンタクトセンターを運営する東京ガスカスタマーサポートと、委託元であるエネルギー事業革新部、ホームページやLINEアカウントを管理するリビング戦略部の3者が協働する仕組みを構築。これにより、ホームページやLINE、アプリの改善を進め、エフォートレスなカスタマーサポートを追求している。

CASE STUDY 2
ジェーシービー

「AIオペレータ」を採用
“人と共創するCX”、実践の要諦

 コンタクトリーズンの多様さ、複雑さが目立つ、クレジットカード業界のコンタクトセンター。比較的規模が大きなセンターも多く、人手不足は深刻な課題だ。

 生産性を高め、オペレータに安心して働いてもらうためにも、「ルーティングの最適化」は喫緊の課題だ。また、同時に自己解決比率を高めることができれば、CXの視点でも大きな相乗効果が期待できる。

 業界大手のジェーシービー(JCB)は、「AIオペレータ」を採用。これらの課題に果敢にチャレンジし、一定の成果を上げている。

 中核をなしているソリューションは、日本IBMの「Watson」。PoCを経て、2021年〜2022年にかけて本格稼働を開始した。対象コールは「個人情報を参照せずに対応できる、一般的な問い合わせ」で、それだけでも年間約140万件を数える。導入効果としては、IVRによる処理時間の大幅短縮、自己解決率の大幅向上とエスカレーションの大幅削減などがあげられる。

CASE STUDY 3
みずほ証券

ITがオペレータと顧客を支援する!
DBルーティングから生成AIまで“7つ”の取り組み

 国内外問わず、個人から法人・機関投資家まで幅広い顧客に、資産運用から投資銀行業務まで総合的な金融サービスを提供するみずほ証券。同社の個人顧客の年齢層は比較的高く、とくにコールセンターへの入電層は60歳以上が多い。結果、AHT(平均対応時間)は長くなりがちで、センター業務の効率化と迅速な問題解決という「ES/CSの向上」の両方の観点からの課題を解消すべく取り組んだのが、「顧客の用件把握」の強化だ。そこで、同社はDBルーティングから生成AI活用に至るまで“7つ”の取り組みを実施、一定の成果を挙げている。

 同社の事例からは、「生産性/品質向上」という根本的な問題の解決には、一面的な短期間での効果を図る施策ではなく、多面的なアプローチが必要なことを読み取ることができる。

CASE STUDY 4
ロイヤリティ マーケティング

広い顧客層が生む宿命的課題への対応
第一歩はFAQ、勘頼みから「AI+人材」へ進化

 顧客層が多様でリテラシーにバラつきが大きい場合、IVRなどでコンタクトリーズンを特定する“前さばき”の難易度は高まる。「その他」の選択が大半を占めたり、選択ミスによってたらい回しが頻発する事例は枚挙に暇がない。とはいえ、迅速な問題解決と生産性向上は大命題だ。

 日本最大級の共通ポイントサービス「Ponta」を運営するロイヤリティ マーケティングがまず取り組んだのが、AIを活用したFAQの強化だ。具体的には、FAQとチャットボットを一元管理。また、従来は担当者の経験に基づく勘にゆだねる形でメンテナンスしていたが、今ではAIがチャットボットのログを分析、改善が必要なコンテンツを提示、FAQに反映している。

 前さばきの必要性のない、自己解決を高める取り組みは、CX/EXのいずれの観点でも重要性が高く、その好事例といえる。

<記事全文は「月刊コールセンタージャパン」をご購入、ご購読ください>
紙版:店舗でのご購入
紙版:年間/単部でのご購入
電子版:年間でのご購入
電子版:単部でのご購入

2025年05月20日 00時00分 公開

2025年05月20日 00時00分 更新

おすすめ記事

その他の新着記事

  • スーパーバナー(P&Wソリューションズ)

●コールセンター用語集(マネジメント編)

●コールセンター用語集(ITソリューション編)

 

記事検索 

購読のご案内

月刊コールセンタージャパン

定期購読お申込み バックナンバー購入