Part.1 <データ分析>
「電話離れ」が顕著なのは、若い消費者だけではない。企業のコールセンターもまた、人手不足と採用における不人気ゆえに「呼量削減」、つまり他のチャネル──テキスト対応への移行を進めつつある。編集部では、今年も「オムニチャネル体験調査」を実施。メール/有人チャット/チャットボットの利用経験者にその印象を聞いた。結果をレポートするとともに、識者による座談会を収録する。
コロナ禍での消費生活、あるいは働き方の変化によって、企業と顧客のコミュニケーション手段にも変化が生じた。BtoB,BtoCを問わず、従来、最大のコンタクトチャネルだった電話から、メール(問い合わせフォーム)、チャット、チャットボットといったテキスト・コミュニケーションが主流となりつつある。
月刊コールセンタージャパン編集部では毎年、電話で企業に問い合わせした消費者を対象とした印象調査を実施してきたが、こうしたトレンドに合わせ、一昨年から問い合わせフォーム/メール、有人チャット、チャットボットの利用経験者を対象とした調査も開始した。2024年は6月に実施。インターネットリサーチ大手のクロス・マーケティングのモニターから計600名の回答者を募った。
回答傾向をまとめたのが図1だ。昨年に引き続き、回答者の年齢層が高い。
チャットでの問い合わせも、多くを50代以上が占める。“若年層はサイレントカスタマー化しやすい”ことは、従来から指摘されていた。有人チャットやチャットボットがその対策とされている傾向はあるが、実際の利用者属性を詳細に捉える工夫が必要と推察される。
本特集では、問い合わせの際の用件、解決度、満足度などを抜粋、検証している。
全データは秋発刊予定の「コールセンター白書2024」に収録予定だ。
Part.2 <座談会>
毎年、コールセンター白書に掲載している「オムニチャネル実態調査」。メール(Webフォーム)、有人チャット、チャットボットの利用体験に伴う満足度や解決率には、昨年から大きな変化は見られない。言い換えれば、CXを左右する大きなポイントであるチャネル最適化が滞っているということだ。「5年後のコンタクトセンター研究会」のリーダー3氏が、生成AI活用や導線設計などについて議論した。
<出席者>(順不同)
<モデレータ> コールセンタージャパン編集部
──「オムニチャネルの最適化」は、月刊コールセンタージャパン編集部が主宰する「5年後のコンタクトセンター研究会」の一大テーマ、「CX(カスタマーエクスペリエンス)向上」を左右する取り組みのひとつです。3分科会のリーダーの皆さまと、調査結果を共有、議論します。まず印象に残っている点からお聞かせください。
渡部 全般的には、利用した消費者の満足度が高い印象を持ちました。気になったのは、問い合わせの解決方法としての評価で、高い順にメール、有人対応チャット、チャットボットでした。毎年、この調査結果は注目していますが、チャットボットの満足度と解決率は経年でほぼ改善されていません。「無理やり使わされた」「どうせ解決しない」といった不満が昨年比で増加しているようです(図3)。
寺下 図4を見る限り、顧客は丁寧な対応よりも問題解決を重視している点は見逃せません。多くのセンターは未だに敬語の使用を厳しくチェックする傾向がありますが、顧客が本当に求めているのは問題がスピーディに解決すること。それはタイムラグが許されていると企業側が考えているメール対応でも同じです。コンタクトセンターの運営方針、教育方針の見直しが必要な時期と推察します。
秋山 全体的に経年比較で大きな変化が見られませんね。従来同様、Webサイトの検索機能が不十分という原因から問い合わせが発生しています(図5)。回答者の年齢層が高いことも原因のひとつだと推察します。また、チャットボットをはじめさまざまな自己解決ツールが進化した結果、単純な問い合わせが減少し、複雑な問い合わせが増加しているとも推察できます。
──生成AIの登場により期待値が上がっているチャットボットですが、渡部さんのご指摘通り、経年で見ても解決率はあまり改善されていません(図6)。
2024年09月20日 00時00分 公開
2024年09月20日 00時00分 更新