AfterCall~電話の後で 第149回

2024年9月号 <AfterCall〜電話の後で>

山田祐嗣

コラム

第149回

相手のマインドを前向きにする
“ポジティブ表現”活用のススメ

 先日、コンタクトレンズを継続発注に行くと、「眼科で医師の診断を受ける必要がある」と言われました。軽い気持ちで近くの眼科へ向かい、検査と診察を受けると、医師から「自覚症状はないと思うが、あなたのような目の人は将来必ず緑内障になる」と言われ、治療を勧められました。なにか「気軽に占いをしたら、いきなり将来の不幸を予言され、高価なものを購入しなければならなくなる」ような、不安な気持ちになりました。健康診断でも、毎年BMIと腹囲測定をするだけで一律メタボ予備軍に分類され、指導を受けなければならいないことには若干の抵抗感があります。今年の健康診断も、また厳しい結果が予測されたので気が進まなかったのですが、看護師さんの「今年は去年よりも腹囲が2cm成長しましたね」の笑顔の一言には和まされ、すんなりと結果を受け入れられました。同じことを伝えるときも、「太った」とか「重くなった」とか厳しい表情で言われるより、「成長した」と笑顔で言われたほうがポジティブなイメージが持てます。

 顧客対応をモニタリングしていても、スムーズに会話が進んでいるサポート担当者の言葉選びや話しの運び方は巧みで、ポジティブ表現の引き出しが非常に多いのです。社内規則やルールで決まっていることを伝えるときでも、そのままマニュアルの棒読みのように伝える担当者と、「その規則やルールが顧客のためにどのようなメリットがあるのか」をポジティブに伝えて、受け入れてもらうことを考えている担当者とでは、顧客の反応が大きく異なります。顧客はサポート担当者に比べて、商品やサービスに関する知識が圧倒的に少ないので、契約書や約款に書かれている条文を一方的に伝えられると、意味は理解できても不満が募り、会社に対して冷たい印象や雰囲気だけが残ります。コールセンターを運営していると、ポジティブな表現を多用しながら、前向きに顧客に寄り添った対応を行っているサポート担当者のほうが、顧客との心理的な距離を空けてマニュアル通り事務的に対応しているサポート担当者より、トラブルなど困難な状況に発展することが少ないと気づくことがあります。顧客の協力も得ながら疑問点を解消に導いていると、相手の理解も早くなり、結果としてトータルの通話時間が短くなるケースもあります。

 サポートセンターを運営している方から、「クオリティとパフォーマンスのどちらを優先すべきか」を問われることがあります。実際は、クオリティを向上させることでパフォーマンスも上がっていくのではないでしょうか。顧客満足度が高いサポート担当者は、ポジティブに相手に伝える言葉の種類や言い回し方法が豊富です。具体的な表現方法は、扱う商材やサービスの内容によって異なりますが、どのようなサポートにも大多数の顧客に受け入れられるポジティブ表現があります。顧客対応にはポジティブな表現を積極的に使うよう幅広く指導すれば、高い顧客満足度とパフォーマンスが両立したサポートセンターになるのではないでしょうか。

PROFILE
山田祐嗣
HDI国際認定資格取得者:HDIイベント、認定トレーニング、格付けベンチマーク、メンバーネットワーキング、実態調査などを通じてサポート業界に価値を提供し、サポートセンターのサービス品質向上および地位向上を目指し活動をしています。

2024年08月20日 00時00分 公開

2024年08月20日 00時00分 更新

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