世界最大級のコールセンターBPO市場
フィリピンに学ぶ「採用、育成、ES向上施策」
──HDI-Japan
アジア諸国の中で唯一英語が公用語であるフィリピン。米国企業を主な顧客対象に、コールセンターのBPOビジネスを国策として展開。世界最大級の市場規模に成長し、同国のGDP拡大をけん引している。フィリピン現地ツアーなどを展開しているHDI-Japanに、採用、育成、ES向上施策などの最新事情を聞いた。
フィリピン首都のマニラには、世界中から集まったコールセンターBPO事業者の拠点がある。政府も外資系BPOの誘致施策や就業支援サービスなどを強化しており、「コールセンターのBPO分野における売上額は世界一。毎年6%ほど伸びているGDP拡大の原動力」(HDI-Japan CEO、山下辰巳氏)という。
コールセンター市場における給与水準の伸び率は大きく、マネージャーは、日本の同等クラスの年収と比較するとフィリピンのほうが高水準だという。
給与水準が高い一方で、企業間の争奪戦が激しく転職率/離職率も高い。1年で半数が残れば良いほうで、給与や条件がより良いところへ簡単に転職する。
そこで、各社定着率を上げるためさまざまな工夫を施している。
(1)採用の4〜5割がリファラル採用(従業員紹介制度)
従業員紹介制度での採用は定着率が高い傾向がある。そこで、紹介ボーナス、1年定着ボーナスなどを設定し、長期で在籍してもらう。
(2)家族を招待するイベント
フィリピンは親族、家族のつながりを重視する傾向があり、転職は家族に相談することが多いため、家族に良い印象を持ってもらうべく、さまざまなファミリーイベントを開催する。
(3)成績優秀者専用のランクアップルームを用意
フリードリンクや高級チェアなどを備えた「ランクアップルーム」を用意し、成績優秀者はインセンティブとして利用できる。
(4)多様な福利厚生
カラオケルームやパーソナルトレーナーが常駐するフィットネスジム、安価に食事を提供するなど福利厚生面でも充実させている。
企業別のユニークな取り組みとしては、グローバルで最大規模のBPOであるTeleperformanse(フランス、Daniel Julien CEO)は、トレーナーが常駐するフィットネスジムを完備、業務時間外の気分転換などで利用できる。
ショッピングモールに隣接するVXI(米国、David Zhou. Co-Founder & CEO)は、入口でキャラクターが出迎えてくれ、楽しい職場の雰囲気づくりの一翼を担っている。社内には「インセンティブコーナー」があり、冷蔵庫やウォーターサーバー、家電などさまざまなインセンティブを用意。身近なものとして米やカップ麺などの食材もある。目の前で実物が見えることで社員のモチベーションにつながっている。
Foundever(米国、Laurent Uberti CEO)は、コールセンター社員向けの映画館を用意。視聴チケットも支給される。執務スペースはカラフルかつおしゃれな空間として設計されており、働くモチベーション向上につなげている。
2024年01月31日 18時11分 公開
2023年12月20日 00時00分 更新