市界良好 第131回

2023年3月号 <市界良好>

差別化を図る

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

差別化を図る

秋山紀郎

 利用料を払うことで、一定期間にわたってサービスを使う権利を得られるサブスク。今は、音楽配信などのエンタメ系だけでなく、家具、家電、居酒屋、アイスクリーム、さらにはライフスタイルに合わせて移住できる住まいなどもあり、サブスクが市場にあふれている。ここまで選択肢が多いと、自分の時間をどのサブスクに割り当てるべきか悩んでしまいそうだ。インターネットサービスの普及や決済手段のデジタル化とともに、所有欲の低下といった消費者の価値観の変容が背景にあると思われる。

 商品やサービスがあふれている今、市場における自社の商品やサービスに違いを出す差別化戦略は、企業にとって競争優位を築くうえで重要となる。ユニークで価値があると見られれば、高くても購入につながる。逆に言えば、価格以外の要素で違いを生み出すことが企業の成長に欠かせない。

 かつて、「いきなり!ステーキ」が市場を席巻していた。立ち食いではあるが、本格的なステーキを待たずに、安く、手軽に食べられるのが特徴だった。店舗名もユニークだった。しかし、「やっぱりステーキ」「カミナリステーキ」など類似のお店が次々と現れた。「やっぱステーキ!や」「アッ!そうだステーキ」なんていうお店もあったようだ。そして、ステーキ店のサブスクもある。せっかくの差別化も、長続きさせるのは大変なのである。その点、従業員によるサービスで顧客が体験したことは、真似されにくい。景気後退の懸念が広がる米国では、今、差別化戦略として、顧客体験向上に取り組んでいる企業が多いという。購入や支払いというカスタマージャーニーの最初の体験だけでなく、アフターセールスの顧客体験での違いが、企業の収益により大きく影響するという調査もある。

 さて、コンタクトセンター業界を考えてみよう。今は、IT製品として、数百以上の選択肢があり、それぞれの機能が専門的で複雑になっているため、比較はとても難しい。その状況下、ベンダー各社は製品の買収やサービス統合などにより領域幅を増やし、差別化を図っているように感じられる。それもあり、PBX、CRM、FAQのような区分けが難しくなっている。こうなると、ユーザー企業にとって、自社のニーズに合う製品やサービスを比較して選定するのは至難の業だ。従って、ベンダー側には高い提案力が求められる。ユーザー企業のニーズを深掘りし、自社製品やサービスの中から、どのような提案をしたらカスタマーサクセスになるのかを考えるのがベンダーの営業フェーズの仕事になる。そして、提案活動の過程はBtoBにおける顧客体験につながり、真似のしづらい差別化要素なのである。

 一方、オペレータによる顧客対応はどうだろうか。もちろん、人によるサービスそのものだから、真似のしづらい重要な差別化要素になる。良い対応のできるオペレータが多いコンタクトセンターは、競争力を持つため、そのような人材を育成するための品質管理プロセスは欠かせない。しかし、どのオペレータが優れているかの判定は難しい。評価者によるバラつきも生じやすい。もし、顧客がオペレータを指名する仕組みがあれば、結果は明確になると思う。

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年02月20日 00時00分 更新

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