IT

市界良好 第132回

2023年4月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

人工知能の利用

秋山紀郎

 リックテレコム主宰の5年後のコンタクトセンター研究会ソリューション/サービス分科会で、人工知能が議論され始めたのは2014年である。多くの人が知っている通り、今日では、音声認識やチャットボットなどに人工知能が使われている。人工知能とは、人間の脳の仕組みをコンピュータで模倣したソフトウエアやシステムのことで、人間のような知的な機能を持つ技術の総称である。人工知能が人間の知能を超える日や人間の仕事を奪うかどうかについて議論になることもあるが、ITとしては、身近なExcelの計算力は既に人の知能を超えており、銀行ATMや券売機によって、有人窓口業務の仕事が減少している事象は、もう起きている。人工知能を私たちの知能と比較して仕事を奪うなどと考えるのではなく、どう活用するのかを常に考えるべきである。

 かつてAIによる検索エンジンが普及したとき、調べもの手法が劇的に変わり、分厚い辞書を置く必要がなくなった。レストランの紹介本も見なくなったが、ユーザー評価をもとにお店を選べるように変化した。

 今年に入って、ChatGPTの話題が尽きない。使ってみると、驚くほど優秀であり、ワクワクする。文章生成や翻訳、アイデア出しなど、私たち人間と自然な文章で、コミュニケーションができる。プログラムの解釈や修正など、これまでの検索エンジンではできなかったこともできる。このまま、AIスピーカーとして、対話ができたら便利だし、そうなる日も近いであろう。ただし、すでに試した人は気が付いていると思うが、正々堂々と間違えた回答もする。正解を知っているから、間違いに気付くのだが、通常は知らないことをChatGPTに尋ねる。誤った回答を信じて、行動したときの責任は、ユーザーにあるから気を付けなければならない。

 さて、ChatGPTは、コンタクトセンターでどのように活用できるのか。まず、チャットボットのように直接ユーザーに提供するには、注意が必要だ。今のチャットボットは、間違いを起こさせないように、ボットの解釈と回答をセットで表示していることが多い。ChatGPTであっても、間違ったやり取りをする可能性は否定できないから、そのリスクを承知のうえで、適用範囲を検討する必要がある。その点を踏まえ、センター内部でオペレータ業務を支援する範囲で利用するのはどうか。例えば、顧客とオペレータとの対話の要約である。これにはセンスが問われ、人によって要約の仕方が異なる。その点、ChatGPTというツールで統一すれば管理もしやすい。仮にChatGPTによる要約が間違っていたとしても顧客サービスに直接影響はしないだろう。ただし、顧客の個人情報や機密情報を含む対話の場合、外部への提供には注意が必要である。また、ChatGPTに業務に関する出題をしてもらったり、顧客役を演じてもらってロープレができたら、オペレータの育成に役立つだろう。いずれにしても、情報の取り扱いを慎重に考えることが求められる。

 AIの進化により、マニュアル通りに回答するような、「無難な」コールセンターは、その役割を失う。顧客に寄り添った人間らしいサービスを提供するのが、コンタクトセンターの仕事として認知されるだろう。

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年03月20日 00時00分 更新

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