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2023年1月号 <インタビュー>

「メタバース」の現在地

津田 勇気 氏

普及のカギは“慣れ”?!
実用フェーズに入った「メタバース」の現在地

NTTコノキュー
マーケティング部門
サービスマネージメントグループ 担当課長
津田 勇気 氏

百貨店などの小売り業の参入が相次ぐメタバース。ゲームやコミュニティだけではなく、消費活動の活性化に期待がかかる。コールセンターのノウハウや特異性が活かされる領域になる可能性も高い。NTTグループのXR事業を総結集した新会社、「NTTコノキュー」の津田氏に、メタバースの近未来像を聞いた。

Profile

津田 勇気 氏(Yuuki Tsuda)

NTTコノキュー
マーケティング部門 サービスマネージメントグループ 担当課長

広島県出身。大学で情報科学系分野を学び、2009年にNTTコミュニケーションズに入社。2015年よりXR/メタバース関連の法人向け事業を推進。XR事業統合に向け、NTTドコモで準備を進め、NTTコノキュー設立に伴い異動。現在は、NTTグループを代表するエンタープライズ市場向けビジネスの立ち上げを推進。

──2022年10月1日、新設したNTTコノキューについて教えてください。

津田 NTTグループに散在していた、XR(クロスリアリティ)事業に携わる人材、技術を集約した新会社です。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術をベースに、メタバース事業、デジタルツイン事業、XR事業の3領域で、新たなサービスやソリューションを提供します。具体的には、バーチャル空間でさまざまな体験、コミュニケーションが可能なマルチデバイス型メタバース「XR World」や、スマホ上にARコンテンツを表示し来店誘導などが行える「XR City」などの提供のほか、必要なデバイスの開発を進めていきます。

──今が、XR事業を本格化するタイミング、ということでしょうか。

津田 VRやARは、「VR元年」と呼ばれる2016年にブーム化しました。スマートフォンの登場がひとつのブレイクスルーとなり、安くデバイスを製作できることで、さまざまなアイデアが実現し、投資も進みました。多くの人にとって印象に残っているのは、専用のヘッドマウントディスプレイを装着して遊ぶVRゲームではないでしょうか。しかし、当時はメタバースに参入した企業の多くが、費用対効果を深く検証することなくプロモーションのみ加速し、結局エンターテインメント業界以外に普及せず、2018年には早くも冬の時代に入りました。しかし、2019年頃から建設業界や自動車の設計、エンジニアのトレーニングなどの分野で、VRやARの効果を実感するユーザーが増え、2020年以降、リモートワークの普及で再注目されています。BtoBの領域では、すでに実運用フェーズに入っているといえるでしょう。さらに、2021年には米Facebook社が社名を「Meta」に変更、年間約100億ドルをメタバースに投資していくことを宣言したことで、世界的に注目度が一気に高まりました。

機器縮小、通信増強、AIの進化
気軽に利用できる環境が揃う

──メタバースのブーム化をもたらした技術の進化について教えてください。

津田 大きいのは、デバイスの縮小化と通信速度の向上です。以前は、VRの体験には、今よりも大きな機械を身に着ける必要がありました。また、画像が荒く、ユーザーの動きがアバターに反映される追従速度も遅かったため、リアルさも乏しかった。アバターを使ってYoutube配信を行うVチューバーをするには、さまざまな設備が必要でしたが、現在はゴーグルをひとつ、身につけるだけです。5Gが登場し通信環境が強化されたことで、画像も鮮明になり追従も違和感がなくなったので、よりリアルさを実感できるVR体験が可能になりました。さらに、AIの進化によってアバター技術も発展しており、例えば、ゴーグルを装着した人の表情をリアルタイムでアバターに反映できます。今後、表情転送の速度がさらに増していけば、リアルなコミュニケーションとそん色ないやり取りをオンライン上で実現することも夢ではないでしょう。

(聞き手・石川 ふみ)
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2024年01月31日 18時11分 公開

2022年12月20日 00時00分 更新

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