AfterCall~電話の後で 第161回

2025年9月号 <AfterCall〜電話の後で>

山田祐嗣

コラム

第161回

コンタクトセンターにおけるAI導入と自動化の現状
顧客視点で考える「現場が目指すべきサポート」

 サポートセンターにおけるAI活用や自動化が注目されて1年以上が経ち、多くの企業で実証実験や試験導入が進んできました。しかし、サポートセンターの方々と話をすると、「実証実験は行っているが、その先に進むための経営の了解が得られていない」といった話をよく耳にします。これは日本に限ったことではなく、欧米でも同様の傾向が見られます。先日、私が参加した米国の「サポートセンターのAI活用」のセミナーでも、欧米の参加者から、同様の話を聞きました。とくに、生成AIが注目され始めたころは「AIが担当者に代わって何でもやってくれるので、サポートセンターの人件費や運用費を大幅に削減できる」との期待がありました。そのような考えから、先進的な欧米企業では、担当者の大規模な解雇を行った企業もあるようです。しかし、実際に置き換わったAIのサポート対応は、顧客の満足のいく内容ではなく、顧客が他社に移ってしまい、担当者を採用し直した例もあります。

 先日、ある金融機関で急なサポートを受ける必要があり、電話をかけたところ、AI音声ボットによる一次振り分けになりました。「どのような用件か教えてほしい」と質問され、架電した目的を伝えたところ、私の目的とは異なる候補がいくつか提示されました。架電目的に該当するパターンが登録されていないのか、何度話しても「別の言い方で用件を伝えてください」とのアナウンスが繰り返された挙句、「ショートメッセージでWebサイトのFAQのリンクを送るのでそちらを見るように」と勧められ、電話を切られてしまいました。私はオペレータに相談があって電話をかけたのに、つないでもらうことすらできず、大変残念に思いました。こうした対応は、音声ボットに限らず、有人チャットの一次受付をAIチャットボットで行っている際も経験します。本来は「有人対応を求めてきた顧客を最適な担当者に速やかにつなぐ」顧客視点の対応が求められます。しかし、「有人対応を減らすことで、AI導入によるコスト対効果の成果を出したい」という、企業視点が優先された設計がされているのかも知れません。このように、呼量や有人チャット対応の削減を優先したAI導入は、顧客を失うことにつながります。

 例えば、「顧客の感情が高ぶっている」「問題が複雑または不明確」「重要な判断や影響が伴う」「想定外の事態が発生した」などの場面では、人間らしい対応が求められるため、人が応じなければ顧客の満足度は下がり、不満や苦情につながる恐れがあります。

 AIは急速に進化し、さまざまな業務に特化したAIが、日々発表されています。しかし、発展途上の技術を拙速に導入すると、顧客を失うリスクがあることを認識すべきです。サポート担当者の支援や教育などサポートセンターでAIを活用できる場面は多々あります。

 AIなどのシステム導入は、ビジネスの目的や貢献を達成するための方法のひとつです。顧客体験を向上させることを目的とし、確実に投資対効果が上がっているかを見極めながら、導入していくことが大切です。

PROFILE
山田祐嗣
HDI国際認定資格取得者:HDIイベント、認定トレーニング、格付けベンチマーク、メンバーネットワーキング、実態調査などを通じてサポート業界に価値を提供し、サポートセンターのサービス品質向上および地位向上を目指し活動をしています。

2025年08月20日 00時00分 公開

2025年08月20日 00時00分 更新

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