コラム
第160回
6月にフィリピンのマニラへのサポートセンター視察ツアーを実施しました。今回の訪問の目的の一つが、生成AIやAIエージェントなどの活用状況の把握です。
フィリピンの主要産業は長年、海外への出稼ぎや観光業でした。しかし、20年ほど前に「国民が海外に行かなくても働ける」としてサポートセンターを運営するBPO産業が着目され、官民を挙げて発展してきました。中でも欧米向けのサポートセンターが国民性との相性がよく、急速な発展を遂げたので、1万席を超える巨大センターが数多く存在します。相性とは、とくに「英語が第二公用語である」ことと「ホスピタリティが高い」ことです。現地の日本企業の方から「フィリピン人は目の前に困った人がいたら放っておけない性格」とよく聞きます。今回訪問した企業の多くが、北米やインド、マレーシアなど数多くの国でサポートを行っているBPO企業や銀行、法律事務所など。それらの企業で語られるフィリピンの強みはカスタマーサポートの優位性です。「自社で顧客満足度調査の結果を国別に比較したら、明らかに他国に比べてフィリピンの顧客満足度が高いことが判明したので、事務処理はインドに集約しサポートはフィリピンに集約した」と、ある訪問企業の方が語っていました。訪問した米国最大級の銀行においても「昨年まではマニラで9000席の運用でしたが、今年初めにさらに8000席を追加するためにビルを新築した」など、人によるサポートが拡大傾向にあります。フィリピンのサポート業界には巨額な欧米マネーが流れ込み、AI活用をはじめ、最先端の運営に関する取り組みが積極的に行われています。
今回訪問した企業のAIの取り組みに関して共通部分がいくつかあります。その一つが複数種類のAIを導入すること。生成AIやAIエージェントは、汎用的にインターネットの情報をすべて活用するものや、企業内の情報のみを活用するもの、法律など特定の分野に特化したものなど、無数の種類があります。今回訪問した多くの企業では、5種類以上のAIを業務の特性に合わせて使い分けていました。サービスを提供する国によって関連法令が異なるので、国別に監視チームを設置するなど法令順守にも余念がありません。もう一つは社員へのAI教育の徹底です。フィリピンでは、サポートセンターが国を代表する産業なので、AIへの取り組みが経済に影響します。AIはサポート担当者の代替ではなく、あくまでもツールの一つとして位置づけ、正しく積極的に活用することで生産性が向上し、より多くの業務を受注できると捉えています。例えば、複数種類のAIを導入している企業では、「参照範囲が制限されていないAIでは顧客情報を入力してはならない」「自社の情報のみを参照する自社専用のAIでは顧客情報まで入力できる」「特定業務に特化したAIの取り扱い可能な範囲は仕組みによって異なる」などです。AI教育をマネジメント層からサポート担当者に至るまで浸透させることで、初めて生産性が高く有効なAI活用となり、顧客満足度の高いサポートにつながるのです。
2025年07月20日 00時00分 公開
2025年07月20日 00時00分 更新