コラム
第159回
先日、私がパソコンをメーカーのダイレクト販売サイトで購入した時のことです。Webサイトには、パソコンの高品質なスペックや、利用した際に体験できる新しい生成AIの機能が魅力的に掲載されていました。そして、購入時のサポートセンターや有人チャットはつながりやすく、新しく発売された商品が納品されるまで電話とチャットを駆使してしっかりと対応してくれました。有人チャットで問い合わせた内容は、電話の担当者に適切に引き継がれ、その前提で対応してくれたことには感動すら覚えました。購入後まもなく、外部機器との接続がうまくいかないことが判明しました。サポートのWebサイトでいろいろと調べましたが解決しなかったので、サポートセンターに問い合わせようとしました。しかし、Webサイトには購入済みの顧客に対するサポート用の電話番号も有人チャットも掲載がなく、ハードの不良かソフトの不良かを判別できない状況が続きストレスが溜まりました。購入時の体験に感動しファンになりましたが、今では「次回はもっとアフターサポートがしっかりしている、別の会社のパソコンにしたい」との考えに変わっています。
企業ビジネスの目的である、ロイヤルティの高い顧客を増やして売り上げ増加に貢献することは、商品やサービスを直接販売するサポートセンターだけに任されたミッションではありません。顧客は商品やサービスの検討段階から購入予定の企業を調べ、購入者の感想や意見をネットで知り、イメージを膨らませたうえで購入するからです。顧客が参考にするネットのコンテンツや、YouTubeなどの動画サイトに掲載される顧客の感想は、購入時のサポートだけでなく、購入後の商品やサービスの機能性や使用感、アフターサービスやサポートに至るまで、すべての顧客体験に至ります。顧客は企業のあらゆるタッチポイントで受けた顧客体験で総合的に企業を判断します。購入後のカスタマーサポートの顧客体験も将来の購入に影響を与えるのです。
顧客体験を向上させるためには、タッチポイントごとに顧客がどのような感情をいだき、どのようなストレスを抱えているかを洗い出し、顧客の負荷を見える化したうえで業務を改善する必要があります。前述の通り、顧客はすべてのタッチポイントで企業やブランドを評価するので、例えば当該サポートセンターが担当している一部分のみを切り出して改善策を実施しても、他の部分での不満が大きければ、顧客の総合的な満足度が上がることもなければ、ロイヤルカスタマーになることもありません。
顧客体験は、企業が顧客に提供する全体的な体験の質を指し、顧客満足度、信頼感、ブランドロイヤルティを育む重要な要素です。とくに顧客から見て商品やサービスの違いが分かりづらい業界では、顧客体験の差がブランドに与える影響は大きくなります。すべてのタッチポイントにおいて優れた顧客体験を提供することで、顧客のポジティブな感情やブランドへの忠誠を育み、企業ビジネスに大きく貢献するのです。
2025年06月20日 00時00分 公開
2025年06月20日 00時00分 更新