AfterCall~電話の後で 第158回

2025年6月号 <AfterCall〜電話の後で>

山田祐嗣

コラム

第158回

サポート担当者のソフトスキル管理が
バラつきのないクオリティ維持・向上のポイント

 私は仕事上、サポートセンターの運営管理者の方々の話を聞く機会が多いのですが、最近多い質問は「対応品質のバラつきをなくすために、どのような取り組みをしたら良いか」ということです。モニタリング調査をしていると、同一企業の同一センターでも、顧客の気持ちに寄り添いながら対応するソフトスキルが非常に高い人と、顧客の気持ちにまったく寄り添わず、事務的に聞かれたことにだけ回答する人が混在していることがあります。前者に多く接した顧客はその企業に良いイメージをもち、そのブランドのファンになります。しかし、後者に多く接した顧客は反対の印象をもち、僅かなきっかけでその企業から離れていきます。

 先日、ある金融機関に新聞に掲載されていたサービスの改定内容について問い合わせたところ、「未確定の内容だから」とまったく答えてもらえませんでした。その後、別件の問い合わせをした際に、同じ質問をすると、「未確定情報なので今後変更となる可能性がある」と断ったうえで、現時点で想定される改定内容を可能な限り詳しく教えてくれました。前者の担当者には杓子定規で事務的な印象をもち、後者の担当者からは「顧客の質問にはできるだけ臨機応変に寄り添った対応をしたい」という気持ちが伝わり、良い印象をもったことは言うまでもありません。このような対応の差は業務スキルの違いによるものだけではなく、顧客への接し方などのソフトスキルの違いが大きいです。

 サポート担当者ごとのスキル管理は、バラつきのないクオリティを維持するうえで重要です。多くのサポートセンターが業務スキルやKPI数値をもとにサポート担当者の給与や時給を管理しています。しかし、担当者ごとのソフトスキルまで数値化して給与や時給に反映して、初めてすべてのスキルを管理していることになります。担当者の給与や時給を見直す際には、受電件数や通話時間、後処理時間など機械的に取得可能な数値だけではなく、業務知識などのテストの結果、そして顧客対応に関するソフトスキルを数値化して提示することで、より高い納得感が得られます。

 「当社は委託会社にフルアウトソーシングしているので、個々の担当者のスキルは把握していない」との話もよく聞きます。しかし、顧客からはセンターの運営形態は見えないので、どのような雇用形態の人が対応しても、受付時に名乗られた会社の社員として認識します。社員中心の自社センター、派遣社員中心のアウトソーシングなどの契約形態にかかわらず、担当者一人ひとりのスキルを把握しないと、それぞれのどこを強化すべきかを把握できません。海外のセンターでは、雇用形態にかかわらず担当者ごとに細かくスキルを把握して、弱い部分のみ研修する手法が一般的です。

 企業のブランドを守るうえでも、すべてのサポート担当者が企業のビジョンやミッションを把握していることは重要です。定期的にサポート担当者の個人スキルを確認し不足部分を補う研修を実施することが、効率的に対応のバラつきを減らしクオリティを高めます。

PROFILE
山田祐嗣
HDI国際認定資格取得者:HDIイベント、認定トレーニング、格付けベンチマーク、メンバーネットワーキング、実態調査などを通じてサポート業界に価値を提供し、サポートセンターのサービス品質向上および地位向上を目指し活動をしています。

2025年05月20日 00時00分 公開

2025年05月20日 00時00分 更新

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