コラム
第157回
最近、いくつかのサポートセンターの運営者の方から「コールセンターのオペレータの採用が難しくなった」「採用しても、研修中や着台後まもなく退職してしまう」と話され、「昨年よりも少人数の体制で運営しているのでクオリティの向上まで手が回らない」とか、「対応品質(クオリティ)と受電率など(パフォーマンス)の両立が難しい」と言われます。私もコールセンターの運営に携わっていた際に、受電率が悪いときに顧客に寄り添って対応をしたり、追加の質問の有無を確認したりと丁寧な対応をすることで、受電率が悪化することを恐れた時がありました。確かに、顧客は電話がなかなかつながらず何十分も待たされると、不満が大きくなり苦情に発展することがあります。しかし、長く待たされたうえにやっとつながったサポート担当者に事務的で杓子定規な対応をされると、顧客満足度はさらに下ってしまいます。
私は日常生活の中で疑問に感じたことがあったときに、極力、Webサイトを検索して自己解決することを常に心がけていますが、どうしても自己解決できないときは電話や有人チャットなどの有人サービスで解決を試みます。最近、新しいパソコンをオンラインで購入するにあたり、複数のパソコン直販会社に電話をして相談しましたが、対応はさまざまでした。あるサポートセンターは、Webサイトに掲載されていること以上の情報提供はまったくなく、話し方も事務的でマニュアルを棒読みしている印象でした。そのようなセンターでは会話が広がることもなく早々に切り上げることになり、購入にまで発展しませんでした。購入に至った会社は、冒頭から私が購入検討のために電話したことに対して気持ちを込めて感謝の言葉を伝え、自分の言葉で製品の仕様や魅力を伝えてくれた会社です。通話した時間は長くなかったですが、早い段階で心理的な距離が縮まっているので、手短な説明でも内容を十分に理解し、納得して購入判断に至りました。
サポート担当者の中には、親切・丁寧に対応し顧客満足度評価が高くても、誰よりも一時間あたりの電話対応件数が多く、売り上げに大きく貢献している人がいます。クオリティとパフォーマンスを両立している人の共通点を考えると、一定の特徴が見えてきます。それは電話を受電した直後から気持ちを込めて挨拶し、顧客に敬意を示すことで、早い段階で顧客との心理的な距離を縮めている点です。また、どのような定型的なことを伝えるときも、相手の状況やペースに合わせて自分の言葉で伝えるので、全体の流れがスムーズかつ自然で淀みがありません。顧客の知識レベルや理解度を判断して説明の仕方を臨機応変に変えることで、顧客が求める回答を要領よく伝えます。それにより顧客満足度の高い対応をしながらもパフォーマンスを確保しています。目指すべき方向性はクオリティとパフォーマンスのどちらか一方の選択ではありません。サポート担当者のクオリティを向上させることが、高いパフォーマンスと両立したセンター運営につながります。
2025年04月20日 00時00分 公開
2025年04月20日 00時00分 更新