実践編
第33回
コールセンター「DX化」の絶対条件 のひとつ、『シニアのデジタルシフト』講座を続けてきた。前回から、その概括として押さえたいポイントを、4回にわたってまとめている。今回は2つ目の「Reliability」(インターネットへの不安解消)である。SFO(シニアフレンドリー最適化)の考え方を振り返るとともに、「Reliability」の解決のポイントについて解説する。
「Reliability」(インターネットへの不安解消)を改善するためには、シニア層が抱えているバックグラウンドについて、理解を深める必要がある。
高齢者が感じている「日常生活の不安」として、「健康」「お金」「孤独」が3大不安と言われている。老後のことを考え、漠然とした不安感に襲われる人が少なくないということだろう。デジタルに関しても同じことが言え、40代・50代になってからインターネットに触れ始めたシニア層は、この背景と重なり、インターネット利用に不安感が伴うことが多い。そこで、SFOについて考えたい。
シニア視点のWebサイト(およびアプリ)の「不満足度」解消の4つのポイントを以下に整理する。
A:探している商品、情報が思うように見つからない(一覧性、検索性の不備)……Findability
B:インターネットへの不安(個人情報などの漏えい、詐欺などへの不安)……Reliability
C:高齢者への視聴覚対策の不足(体の衰えへの配慮)……Functionality
D:プリンタ印刷・オフライン動作への対応(印刷、オフラインなどへの依存度が高い)……Device/Offline
今回は、“B:インターネットへの不安(個人情報などの漏えい、詐欺などへの不安)…… Reliability”について解説を行う。
Reliabilityに含まれる項目は以下の8つである。
(1)会社概要
・トップページに会社概要などの表記がある。表記のない場合でも、わかりやすい場所に会社概要を記したページへの導線が整っている
(2)電話対応窓口
・問い合わせや注文のための電話番号、窓口対応時間などの表記がある。この場合、フリーダイヤルマークなどの表示があると認識されやすい
なお、トップページのファーストビューに電話番号表記があるとより良い
(3)注文方法
・会員登録をしなくても商品が購入できる。登録に関しては、退会手順がわかりやすく説明されていることが望ましい
・注文内容(個数・消費税・送料・手数料・支払合計など)が細かく表示され、注文内容の修正もしやすい
(4)支払方法
・複数の支払方法(クレジットカード、デビットカード、銀行・郵便局振込、代金引換、コンビニ後払いなど)が選択可能である
(5)送料・手数料
・「送料、手数料」などの必要な費用について、詳しい説明がある
・無料になる条件、返品の条件・方法などについての明記がある
(6)質問・疑問解消
・「よくある質問」「FAQ」などの回答ページが用意されている
・FAQなどで解決できない場合は、そのコーナーに問い合わせ連絡先の表記がある
(7)セキュリティ
・個人情報保護(プライバシーマークなど)に関する取り組み、サーバー証明書シールなどで、セキュリティ対策が強調されている
・特定商取引法に基づく表記など、法令遵守をした表記がある
(8)クチコミ
・クチコミ情報には、性別・年代・地域などの情報を記載する
・クチコミ情報がない場合でも、☆マークなどでお客様による評価情報が記載されている
<具体的施策>
1、問い合わせ・注文のための表記
電話番号や窓口対応時間・対応曜日などの表記は、はっきりとわかるように表示。とくに「フリーダイヤル」の文言や「通話料無料」などの表記が必要である。なお、「0120」の番号だけではフリーダイヤルと認識できないシニア層にも配慮したい。
2、設置位置
設置する位置は、トップページのファーストビューの範囲に配置することが望ましい。
1、会員登録の必要性
シニア層には、不安感から個人情報を登録することに懸念があるユーザーも多く、会員登録はハードルが高い。そのため、登録をしなくても商品を購入できるようにしておくと、安心して注文をしてくれる。
2、「無料」の表示
シニア層は、会員登録に年会費といった費用がかかる印象があり、それらを不安に感じることもある。そのため、「無料」の表示があれば安心感を与えられる。また、登録後に退会できないのではという心配もあるため、会員登録と同時に、退会についての記述も目に触れやすいように明示することが大切である。
3、買い物カゴの中の注文内容の表示
シニア層にとって、購入金額の合計といった最終金額の表記は非常に重要だ。そのため、送料や手数料といった商品以外の費用が、どの程度かかるかをわかりやすく表記することで、注文や購入へとつなげられる。
1、選択肢
クレジットカード払いを不安視するシニア層は多く、現金での支払い・後払いを希望するユーザーも多い。そのため、代引や銀行・郵便局振込、コンビニ後払いなどの選択肢を幅広く用意すべきである。
なお、クレジットカード払いは、複数ブランド(社)のカードを所有していないユーザーもいるため、こちらもカード会社の選択肢を用意することが望ましい。
1、送料無料になる条件の表示
送料が無料になる条件が、わかりやすく表記されていることが望ましい。
2、返品条件の表示
インターネットでの購入に不安感があるシニア層は、返品表記も重要になる。
高額商品ではとくに、返品の説明につながるボタンなどが、目にしやすい場所にあることが重要。
1、設置位置
「よくある質問」は、すぐに目に触れるトップページに設置することを勧める。「FAQ」という表記もあるが、なかには馴染が薄い人もいるため、「よくある質問」が適切だろう。
2、解決できない場合の問い合わせ先
解決できない場合は、そのコーナー付近に問い合わせの電話番号などが表記されていると利便性が高い。
1、プライバシーマークなどの設置
プライバシーマークなど、対策を講じていることが明確になっていると安心感が高い。
2、「個人情報保護方針」の説明に関する文言の表記
法令遵守されていることを確認するため、「特定商取引法に基づく表記」や「個人情報保護方針」などを閲覧するシニアも多い。そのため、リンク先がトップページにあるなど、文言だけでも信頼感を高めることにつながる。
1、情報内容の信憑性
クチコミは、本当に実在する人物からの情報かを疑われてしまうこともある。
そこで、信ぴょう性をもたせるために、投稿者本人に関する情報が具体的かつ多いほうがよいだろう。性別・年代・都道府県・写真や投稿時期などが表記されるのが良い。
今回は、「インターネットへの不安解消(Reliability)」について説明した。
シニア層のPCやスマホ利用は増えてきているが、インターネットへの漠然とした不安感は拭えていないと捉えるべきだろう。まずは、インターネットを利用して、予約や商品購入をすることへの不安感を払拭するために、インターネットの便利さやセキュリティの高さ、安全性などをしっかりと伝達することが重要だ。こうした対応により、シニア層のインターネットでの購入のハードルが低くなっていくことが望まれる。
2024年12月19日 11時00分 公開
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