実践編
第3回
採用面接では、応募者の本音や共感を引き出すことが成功のカギとなる。単なるスキルや経歴の確認だけでなく、応募者の志望動機や感情、過去の経験にフォーカスすることで、長期的に活躍できる人材を見つけることが大事なのだ。今回は、そのための具体的な質問法として、(1)志望動機を引き出す3つの質問と、(2)感情や経験を引き出す9つの質問を解説する。
面接では、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」の使い分けが重要だ(図1)。オープンクエスチョンとは、「はい」や「いいえ」で答えられない質問であり、応募者に自由な答え方を促す。例えば「なぜこの業界を選んだのか?」は、応募者の価値観や背景を深く探るためのオープンクエスチョン。一方、クローズドクエスチョンは「はい」「いいえ」で答えられる質問で、具体的な情報を得るのに適している。例えば、「これまでにクレーム対応の経験はあるか?」といった質問だ。
面接では、まずオープンクエスチョンで応募者の経験や考え、思いなどの共感ストーリーを引き出すことだ。続いてクローズドクエスチョンでその内容を具体化し、詳細を確認することで、応募者の真の姿を浮き彫りにする。
応募者の定着を考えるうえで、自己PRよりも重要なのが「志望動機」だ。
自己PRでは、応募者が自分の強みやスゴサを強調することが多いが、志望動機を通じてその背景にある「なぜ」を理解することが重要だ。マーケティングコンサルタントのサイモン・シネックは「なぜ(Why)」を語ることが共感を生み、人の行動を促すというゴールデンサークル理論を提唱している。
この「なぜ」が明確であればあるほど、企業の価値観やビジョンに共感し、長期的に会社と共に成長できる可能性が高まる。前回第2回目の連載に詳細を書いているのでぜひ、ご一読いただきたい。
志望動機を深く掘り下げるためには、以下の3つの質問が効果的だ(図2)。
(1)なぜこの仕事をやりたいのか?
例:「これまでのキャリアの中で、なぜこの職種に興味を持ったのですか?」
応募者がこの職種を選んだ理由を明確にすることで、どのような価値観やスキルに重きを置いているかがわかる。
(2)なぜ当社なのか?
例:「多くの選択肢がある中で、なぜ当社に応募されたのですか?」
自社のビジョンや文化に応募者がどれだけ共感しているかを見極めることができる。
(3)なぜ今のタイミングなのか?
例:「今、転職を考えた理由を教えてください。」
応募者が転職やキャリアチェンジを決意した背景を探ることで、個人のキャリアプランとのマッチング度を測ることができる。
これらの質問を通じて、応募者がなぜこの職に興味を持ち、今のタイミングで応募しているのかを理解することができる。
共感を生むには、応募者の感情や経験を引き出すことが重要だ。以下の9つの質問を通じて、応募者の過去のエピソードや価値観を探ることができる(図2)。
(1)失敗や挫折を乗り越えた経験:挫折をどう克服したかを知ることで、応募者の逆境に対する姿勢や粘り強さが見える
(2)やりがいや充実感を得た経験:応募者がどのような状況で達成感を感じるかを知ることで、モチベーションの源泉がわかる
(3)怒りを感じた経験:何に対して怒りを感じるかは、応募者の価値観や正義感を理解する手がかりになりる。
(4)嬉しかった言葉をかけられた経験:どのような言葉が応募者にとって特別かを知ることで、彼らの内面に触れることができる。
(5)初心者としての初めての経験:新しい環境でどのように対処したかは、柔軟性や学びへの姿勢を見極めるのに役立つ。
(6)自分に影響を与えた人:誰に影響を受けてきたかは、応募者の価値観や人生観を知るための重要な手がかりになる。
(7)大切にしている言葉:どの言葉を大切にしているかで、応募者のモットーや人生哲学が垣間見える。
(8)会社やチームに影響を与えた経験:リーダーシップやチームでの働き方を評価するための質問だ。
(9)表彰など選ばれた経験:選ばれることがどう応募者に影響を与えたかを理解することで、自信や達成感の源を知ることができる。
これらの質問から応募者の共感ストーリーを引き出すことで、企業にとって本当に価値のある人材かどうかを見極めることができる。ぜひ、面接の一問一答に取り上げて頂きたい。
2024年11月20日 00時00分 公開
2024年11月20日 00時00分 更新