スーパーバイザーの教科書・Essential 第2回

2024年9月号 <スーパーバイザーの教科書・Essential>

寺下 薫

実践編

第2回

問題解決・人材育成・プレゼンテーション
「SVに必要な3つのビジネススキル」

スーパーバイザーが習得すべき業務は多岐にわたります。しかし、SVは、ビジネススキルを学ぶことなく、SVとして稼働することになる人がほとんどです。このため、いろいろな場面でSVはつまずくことになります。2回目のテーマは、「SVが身につけなければならない3つのビジネススキル」です。SVに必要な問題解決・人材育成・プレゼンテーションスキルについてお話ししたいと思います。

PROFILE
クリエイトキャリア 代表
寺下 薫
外資系企業を経て、ヤフーやソフトバンクで長年、人材育成に携わる。問題解決養成塾「SV研究会」を立ち上げ、若手のSVを育成。現在は独立して、コンサルティングや研修、講演、執筆などを中心に活動中。2024年6月に「スーパーバイザーの教科書」を出版。

 SVが身につけるべきスキルは、多岐にわたります。大きく分けると、SVの専門スキルとビジネス基礎スキルの2つになります()。

図 SVが身につけるべきスキル
図 SVが身につけるべきスキル

専門スキルとビジネス基礎スキル

 専門スキルは、オペレータの管理やKPI管理、マニュアル作成やクレーム対応、モニタリングなど、SVの守備範囲は本当に広いです。昔、アウトソーサーのSVとして働いていた時、あるクライアント担当者から「SVは何でも屋だね!」と言われたことがありますが、まさにその通り。採用から新人オペレータの教育、オペレーション管理、クレームの2次対応まで、何でもできるようになるからです。

 一方、ビジネス基礎スキルは、現場でSVが学ぶことができていないスキルです。これは、コンタクトセンターにおけるSV育成で、大きな問題の一つです。SVは着任後、電話対応の基礎をはじめ、オペレータの質問対応、シフトの作成やモニタリング、クレーム対応、月次報告書作成などの専門スキルは学べても、ビジネススキルを学ぶ環境が与えられないまま、SVとして稼働することになるからです。

 とくにオペレータから昇格したSVは、オペレータ時代に優秀だったことからSVとして登用されることがほとんどのため、コンタクトセンター運営に必要な専門スキルは教えられても、ビジネス基礎スキルは教えられたりすることはないのです。そのため、多くのSVは、稼働後、思いの外、苦労することになります。例えば、月次報告書を作成する際は「報告書に必要なコンテンツは何か?」「相手に短時間で理解してもらえるための報告書の効果的な見せ方は?」「着信数や応答率などデータをグラフで見せる時、どんなグラフで描くと効果的か?」などが分からないので、過去の報告書を参考にしながら手探りで作成することになります。結果、ビジネスの基礎スキルがないまま、SVの専門スキルだけを身につけることになるため、いろいろな場面でつまずくことが発生するのです。

 そのため、SVはビジネスの基礎スキルを身につける必要があります。とくに、問題解決、人材育成、資料作成を含むプレゼンテーションスキルを早めに習得しておくことをオススメします。

基礎能力を高める3つのスキル

(1)問題解決

 問題解決スキルは、とても重要です。なぜなら、SVは、ほぼ毎日のように問題に直面するからです。新人オペレータが急に辞めていった、クレームが多発している、ミスが続発している、残業が増えてしまって自分の業務に手がつけられないなど、さまざまな問題を解決していく必要があります。

 日本には残念ながら、正しい問題解決の手法を教えてくれるところはありません。小学校、中学校、高校、大学と、あなたも何かしら学校は出ていると思いますが、数学や英語、歴史は学んでも、問題解決の授業はなかったと思います。しかし、社会人になるとすぐ、問題に直面するようになります。

 それにもかかわらず、上司にも先輩にも問題解決の正しい手法を教えてくれる人はいません。私もいなかったです。だからこそ、日々起こる問題に対して、どう解決していけばいいのかといった正しい問題解決の手法について、学んでおく必要があるのです。

(2)人材育成

 次に人材育成です。コンタクトセンターは、現在、どのセンターも採用難の状況にあります。残念ながら、コンタクトセンターは、とくに人気がなく、採用をかけてもなかなか人が集まらない状況です。そのため、センターで現在働いている人たちにできるだけ長く働いてもらえるためにも、人を育てていく必要があります。

 人を育成する際、4つのステップで育てていくと良いです。まず、①新人を育成するための準備、例えば研修の計画を立てたり、マニュアルを準備したりして(準備)、②ロールプレイングなど対応の見本を見せて(提示)、③実際に新人さんにやってもらって(実行)、④フィードバックする(評価)という4つのステップに従って育成していくと効率的です。では、ここで問題です。準備・提示・実行・評価のうち、一番重要なものがあります。さて、それは何でしょうか? 正解は評価です。これを知らずして人材育成はできません。

(3)プレゼンテーション

 最後、3つ目が資料作成を含むプレゼンテーションスキルです。

 SVは、オペレータの前で説明をしたり、朝礼で話をしたりする機会が多いです。また、SVがセンター内で新しい施策を提案する時、口頭で提案するというのもできなくはないですが、できれば企画書などを作成して提案することが望ましいです。その際、センター長に「うん」と納得してもらえる資料が作成できないといけません。

 私は、30歳まで資料作成はまったくやったこともなかったですし、スキルとしてもありませんでしたが、ヤフーやソフトバンクで学んだ結果、社長の資料まで作成できるようになりました。何が言いたいかと言えば、資料作成スキルは、訓練で誰でもできるようになります。あなたの周りで資料作成が上手な人がいたら、フィードバックをもらってみてください。

 ビジネス基礎スキルを身につけられていないSVは、ビジネス書を読んだり、セミナーに参加したりするなど、自己研鑽から始めてみると良いでしょう。

2024年08月20日 00時00分 公開

2024年08月20日 00時00分 更新

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