基礎編
第4回
顔が見えない状況下で、迅速かつ丁寧な応対が求められる電話応対は、高度な応対テクニックを必要とし、新人育成は極めて重要だ。今回は、新人育成のよくある5つの課題──(1)スキル不足、(2)知識不足、(3)ストレスとプレッシャー、(4)指導に対する抵抗感、(5)モチベーションの維持について解説するとともに、具体的な対策を紹介する。
電話応対の新人育成において、よくある課題が次の5つである。
(1)コミュニケーションスキルの不足:顔が見えないリアルタイムのやりとりは、齟齬が生じ、コミュニケーションの問題が発生しやすい。コミュニケーションに不慣れな新人は、適切な言葉遣いや声のトーンを使い分けることに手間取ることが多い。経験が浅い新人にとって、臨機応変に対処する能力や最適な解決策を見つける能力の確立は難しいものだ。
(2)製品やサービスの知識不足:新人が製品やサービスに関する十分な知識を持っていない場合、顧客の問い合わせに迅速に対応できない。トレーニングプログラムが不十分であったり、情報提供が不足している場合に顧客を怒らせるなどの問題に発展しやすい。
(3)ストレスとプレッシャー:新人は、電話応対中にストレスやプレッシャーを感じやすい。電話応対は、リアルタイムでやり取りするため、顧客からの問い合わせや苦情に対して即座に対応する必要がある。新人は、臨機応変な対処が難しく、自信を失ったり不安を感じたりすることがある。そのため、ストレスやプレッシャーを感じやすく、それが品質の低下につながる。
(4)フィードバックの受け入れに対する抵抗:新人がフィードバックを受け入れることに抵抗を感じることがある。とくに、自己評価が低い場合や、適切なフィードバックを提供する文化が育まれていない組織で働く場合に発生しやすい。マイナスのフィードバックを受けた際には自信を失ってしまい、品質が低下するという悪循環になる可能性が高い。
(5)継続的なモチベーションが維持できない:新人は、電話応対の継続的なモチベーションを維持することが難しい。とくに、業務の単調さや難しさに直面した際には、モチベーションが低下し、品質の維持が困難になる。新人は初めての業務に慣れるまでの間、どうしてもやる気やモチベーションが低下する傾向にあることを理解し、継続的にモチベーションを保つための環境の工夫が必要である。
これらの課題を放置すると、応対品質の維持と向上ができずクレームに発展したり、離職につながったりする。
次に、これらの課題を解決するために、有効な5つのアプローチを紹介する。
(1)継続的なトレーニングプログラムの提供:新人に対して継続的かつ綿密なトレーニングプログラムを提供する。基本的なコミュニケーションスキルに加えて、実際の電話応対のシミュレーションやロールプレイを通じて実践的なスキルを磨くことが重要だ。
(2)フィードバックとコーチングの提供:新人に対して定期的なフィードバックを提供し、改善のための指導やサポートを行う。肯定的な点だけでなく、改善の余地や問題点についても率直に指摘し、具体的な改善策を示すことがポイントだ。とくにZ世代へのフィードバックの際には、結果や成果といった「コト」ではなく、マインドやプロセスといった「ヒト」の承認を心がけることだ(図1)。ちなみに承認とは、「正当であると認めること。一定の事実を認めること。聞き入れること。受け入れること」を指すので、受け入れる姿勢が非常に重要だ。
(3)メンタリングプログラムの導入:経験豊富な人をメンターとして新人に指導を行うメンタリングプログラムを導入する。メンターは新人の経験や課題を理解し、適切なアドバイスやサポートを提供する。
(4)ストレス管理のサポート:新人に対してストレス管理のテクニックやリラックス方法を教え、ストレスやプレッシャーに対処する能力を向上させる。また、チーム全体でのストレスマネジメントの取り組みを促進し、快適な労働環境を提供する。
(5)ポジティブな励ましとモチベーションの維持:新人に対してポジティブなフィードバックや励ましを積極的に行い、モチベーションを維持する。成果を認めることで自信をつけさせ、業務へ積極的に取り組めるように努める。
これら5つのアプローチを組み合わせることで、電話応対における新人育成の問題点を解決できるだろう。
筆者が育成に携わったあるコールセンターでは、オペレータのやる気をなくす言葉が、上司の口から、たびたび発せられていた。この会話のサイクルを意図的に変えたことで、オペレータ全員の底上げに成功した経験がある。図2に「部下のやる気をなくす会話のサイクル」を載せておくので、日常で使っていないか確認してほしい。
十分なトレーニングや指導を受けても、さまざまな要因で品質が変動するものだ。管理者の負荷は大きくなるが、オペレータの課題を理解し、適切なサポートを提供し続け、成長と発展を促さなければならない。
2024年08月20日 00時00分 公開
2024年08月20日 00時00分 更新
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