証券会社の営業といえば、業績によって評価されるシビアな仕事だ。しかし、顧客本位の営業を追求するみずほ証券は、FD(フィデューシャリー・デューティー)実践に向けた企業文化の定着を図るためにグループで「クライアントファースト マイスター」制度を導入している。CFP・FP1級、または証券アナリスト2次のいずれかを取得していることが前提で、お客さまの支持・評価、FD実践状況のいずれも高い人材を認定する制度だ。2019年度から認定を開始し、これまでみずほ証券ではわずか20名しかいない認定者の1人が、亀井海人さんだ。
亀井さんのお客さま満足度が高い理由は、笑顔と親しみやすさ、適切な距離感にある。営業の対象は、高齢の富裕層が多い。とくに地方の場合、医師や弁護士、会社経営者がほとんどだ。「先生」「社長」と呼ばれてきたお客さまを相手に、亀井さんはファーストネームで呼びかけるようにしている。
「証券会社の営業と話す時間は、お客さまにとってはプライベート・タイムです。会話は、趣味や近況などの雑談が中心で、リラックスして話していただけるよう、下の名前で呼び、距離を近くに感じていただくようにしています」(亀井さん)
相手の話すスピードに合わせる、その土地の文化やお客さまの趣味に興味を持つ、なども意識する。
「お客さまが話し終えるまでは話をしないようにしています。また、お客さまが少し間違った言い回しをしたとしても、ミスリードにならないものであれば、こちらも同じ言葉や表現を使い、話をするようにしています」と説明する。
例えば、「野菜作りが趣味」というお客さまがいれば、亀井さんもベランダで苗を育てる。同じ体験をした話題は会話も深まり、信頼関係も築ける。
また、お客さまの家族と共に特別なイベントに行く機会があった際には、家族の一員として溶け込む。家族も含めて仲良く過ごすことで、結果として次世代の顧客獲得につなげる。
「いきなり投資の話をしても、心を開いてくれません。お客さまやご家族のことをよく知り、深い関係を築くことで初めて、“任せてみよう”と思っていただけます」(亀井さん)
亀井さんは入社後、金沢支店、浜松支店と地方支店を担当した。「どちらも歴史のある地域。それぞれの食や文化に触れられるのは楽しかった」と亀井さんは転勤をポジティブに受け止めている。金沢支店にいた時、大雪の日に革靴で営業し大変な思いをしたのもいい思い出だ。
「金沢は加賀百万石を築き守ってきた地域です。一方、浜松は東海道五十三次の宿場の一つであり、徳川家康も居城した浜松城がある出世の町。いずれも歴史ある地域でありそれぞれの県民性があります」(亀井さん)。こうした地域特性の違いを感じながら、営業スタイルに変化を取り入れ工夫を凝らすのも、亀井さんにとっては楽しみのひとつだ。
お客さまの多くが事業に成功した経験を持つことも、亀井さんの好奇心を刺激する。「雑談を通して、数多くの成功者の体験を聞けることが、この仕事の醍醐味。珍しい体験、ハラハラするような経験を、本人から直接聞くことができるのは人生のヒントをもらえる貴重な時間です」(亀井さん)。
就職する際、証券会社を選んだ理由について亀井さんは、「金融の知識は、人生にも役立つと思い志望しました。実際に、自身のライフプランにも活かせています。結婚し、子供が2人生まれ、必要なお金を計算し資産を運用しています」と説明する。
経験を積むなかで、後輩も増えた。「後輩は未来の宝物」といい、“質問しやすい雰囲気”を保つよう意識している。いつも笑顔で相談に乗る亀井さんを慕う後輩は少なくないだろう。
亀井さんには、「富裕層ビジネスのプロフェッショナルになりたい」という目標がある。今年の4月に、富裕層向けサービスを企画・運営する部署に異動。「これまでの経験を活かすとともに、目標をかなえるステップにもなる。富裕層に喜んでいただけるサービスを開発していきたい」と意気込む。
会員限定2024年07月20日 00時00分 公開
2024年07月20日 00時00分 更新
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