座談会 <BPOと共創する方法・後編>
委託元企業2社と受託・委託双方を経験した識者による座談会。前編では、委託先の選定や稼働後のチェック体制などについて論議し、「付き合いが長いほど監査の眼は甘くなりやすい」などの厳しい指摘が出た。後編では、委託先とのさらに深い関係構築方法などについて議論する。
<出席者>(順不同)
<モデレータ> コールセンタージャパン編集部
──BPO企業への業務委託を継続するなかで、課題と感じる点や困ったエピソードはありますか。
篠田(NTT東日本) 委託元には、“言ったことのみをやってくれればよい”という考え方をする企業もあるかもしれません。しかし当社は、“言われたことのみをやりました”という姿勢の企業とは、継続的な関係構築は難しいと考えています。現場は顧客対応の最前線ですから、毎日のように課題や改善点が発生して当然です。こうした課題について、ともに悩み、解決策の提案や解決に向けた議論などができる企業でなければパートナーシップ強化は難しい。当社としては、“ともにお客様対応を向上していく”という価値観を共有できるBPO企業と取り組んでいきたいと考えています。
松村(カゴメ) あまり喫緊の課題を感じたことはありません。しかし、マルチベンダー方式を取っているせいか、委託企業ごとの管理体制のバラつきが気になることはあります。対応策としては、共通課題の抽出や共通のKPIを設定し、委託元である我々が主導した進捗管理を徹底しています。結果的に委託先が多いほど人や時間といった管理コストや工程が増えて、自社のリソースに負荷がかかることがネックですね。
応対品質基準は、全委託先で同一です。評価内容もオープンです。そうすることで改善点をお互いに見つけ、研鑽しあい、改善につなげています。
永倉(Wave Assist) BPO企業に在籍した身としては、篠田さんのご発言は本当にその通りだと思います。ただ、委託元に対しては業務報告会などを定期的に開き、「この点が足りない」ときちんと指摘すること、契約内容との相違点があればもれなく伝えることを推奨します。相手はプロですから、気後れや遠慮をする必要はありません。とくに委託が決まってから稼働開始までは、BPO企業のパフォーマンスが明確になりにくい。それだけに“言われたこと以外にも前向きに取り組んでくれる”企業姿勢があるかどうかは、選定の際にチェックした方がいいかもしれません。
(松村さんが在籍する)カゴメのように、マルチベンダー運営ならば、ベンダー同士に競争原理を働かせることも重要。業務の結果次第では、発注量の変動も当然です。BPO企業は虎視眈々と“その時”を見計らっています。ただし競争原理は大事ですが、行き過ぎはよい結果を生まないことは肝に銘じてほしいですね。
──下請けではなく、「パートナー」となるBPO企業の条件について教えてください。
篠田 同じビジョンや価値観を持ち、同じ方向を見ることのできるパートナーです。(NTT東日本のパートナー企業の)キューアンドエー社の企業理念「感動共有企業」であったり、「クライアント企業の想像を超える対応」といった想いにはとても共感しています。当社は、「地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業」を目指し、お客様へのICT環境やサポートの提供とともに、地域のデジタルデバイドをなくしていきたいというミッションもありますから、近いビジョンを有していると考えています。そのため、現場でマネージャー同士が話していても、お客様対応の向上に向けて認識などがズレることは少なく、双方が“配慮はしても遠慮はしない”という心構えで業務を進めています。
もちろん、我々も提案をただ待っているのではありません。実行したい内容を伝えて、より良い方向性を共に探っています。
松村 速やかな“報(告)・連(絡)・相(談)”ができることでしょうか。本社とコンタクトセンターとは、物理的な距離があり、コンタクトセンターでは、「予想できないこと」も発生します。
ですから、発生した出来事を的確に報告・連絡・相談してもらえると、対応しやすいのは言うまでもありません。場合によっては言いにくい要素もあるのかもしれませんが、エスカレーション案件を何日も放置するなどは、もってのほかですね。
会員限定2024年06月20日 00時00分 公開
2024年06月20日 00時00分 更新