座談会 <チャットボット育成者のホンネ>
データから「期待値」を想定する!
“役立つ”チャットボットの『育て方』
チャットボットは導入するだけで勝手に問い合わせに対応してくれる「魔法の箱」ではない。日々のメンテナンスが欠かせない、“育成”が必要なロボット・オペレータだ。“育ての親”に、回答精度を上げるための日々の取り組みとポイントを聞いた。
<出席者>
<モデレータ> コールセンタージャパン編集部
──本日は、チャットボット運営のご担当者様に集まっていただきました。まず、自己紹介をお願いします。
渡邉 1999年からキリンのお客様相談室で、主に電話やメールによる顧客対応を行ってきました。2021年からチャットボットやホームページの運営、X(旧Twitter)の対応チェックを担当しています。
三宅 2022年4月から三井住友銀行のリテールマーケティング部に配属になり、昨年4月からチャットボットの運用を担当しています。
上田 ベネッセコーポレーションで、通信教育サービス「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」に関する問い合わせを受け付ける窓口に携わり、2023年度からノンボイスチャネルに関する業務を主に担当しています。
西原 ベネッセコーポレーションのコンタクトセンターを受託するTMJで、2019年度から「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」の保護者向けチャットボットの運用構築、管理を担当しています。
エフォートレス、ロイヤルティ醸成
チャットボットの役割は「CXの向上」
──各社のチャットボットの主な役割について教えてください。
渡邉 お客様とのタッチポイントを増やす目的でチャットボットを導入しました。従来から電話やメール、手紙によるコミュニケーションを行ってきましたが、さらにチャネルを充実させることで、お客様のロイヤルティを醸成することが狙いです。このため、チャットボットについては解決することも大切にしていますが、コミュニケーションの濃度やホスピタリティも重視しています。実際に、お困りごとだけではなく「いつも美味しく飲んでます」など温かいお声がけを送っていただくこともあります。
三宅 当社もチャネルを充実させることで、お好きなチャネルで問い合わせられるよう、チャットボットと有人チャットを導入しています。昨年、「Olive」という銀行口座とクレジット、デビット、ポイント払いをひとつのアプリでまとめて管理できるサービスを開始したこともあり、ノンボイスチャネルへのニーズが一層高まっています。チャットボットへの主な問い合わせ内容は、商品・サービスに関するものです。
上田 2016年からチャットボットを運用しています。「進研ゼミ小学講座」で運用を開始し、その後、未就学児向け「こどもちゃれんじ」と「進研ゼミ中学講座」「進研ゼミ高校講座」にも対象を広げました。学年が切り替わる春に問い合わせが急増するため、チャットボットには、電話対応の繁閑差を埋める役割も持たせています。Webサイトのほか、LINEでも対応しており、主にコースの内容や教材に関する問い合わせを受け付けています。保護者の年齢が若いほど、チャットボットの利用率が高い傾向があります。高校生向けの商品については、お子様からも問い合わせがあります。
──チャットボットを運用するため導入しているツールの特徴や、選定の決め手を教えてください。
三宅 セールスフォース・ジャパンの「Einsteinボット」を導入しています。決め手は、本人確認を行い顧客情報と紐づけて運用できることです。チャットボットでは、FAQの提示など画一的な問い合わせにのみ対応しているため、個人を特定しなければ回答できないパーソナライズな問い合わせに発展した場合は有人チャットにエスカレーションします。その際、ボットの対応履歴もオペレータに引き継いで対応しています。
西原 PKSHA Communicationの「PKSHA Chatbot」を活用しています。商品が多岐にわたり、それぞれで問い合わせ状況を管理する必要があるため、管理機能が充実していることが導入理由です。
渡邉 サイシードの「sAI Chat(サイチャット)」を導入しました。導入の決め手は、メンテナンスを自分たちで行える点にあります。日々の問い合わせ内容の変化にスピーディに対応するためです。毎日、実際に検索されたワードを確認し、ニーズを検証して改善しています。
「解決しましたか」でCSを測定
チューニングは1名専任が基本
──チャットボットのメンテナンスについてお伺いします。まず、KPIや体制について教えてください。
会員限定2024年03月20日 00時00分 公開
2024年03月20日 00時00分 更新