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市界良好 第136回

2023年8月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

導線設計

秋山紀郎

 子供のパスポート申請をした。外務省のホームページを閲覧すると、「オンライン申請が始まりました」とあり、手順についても記載されているようだったので、週末にでもゆっくりやろうと考えた。ところが、いざ手続き方法を確認すると、有効期限が切れたパスポートの新規申請の場合、戸籍抄本を取り寄せる必要があり、「必要な提出書類は窓口申請の場合と同じ」とある。どこがオンラインなのかと思いつつ、窓口申請することになった。本籍が現住所と異なるため、マイナンバーを使ってコンビニで申請後、戸籍抄本を取り寄せるまで1週間かかった。まあ、ここまでは仕方ない。

 必要書類を揃え、事前にダウンロードしたパスポート新規申請の用紙に記入を終えた。念のため、ある日のパスポートセンターの待ち状況を見ると、0分〜90分となっていた。よく分からない表示だと思ったが、平日の朝一番に行けば、90分は待たないだろうと思って、9時にパスポートセンターに出向いた。しかし、そこには恐ろしい光景が待っていた。受付は、ビルの2階にあるのだが、整理券をとるための行列が、らせん階段の地下までとぐろを巻いていた。最後尾にたどり着き、行列に加わった。100人以上とすれ違った気がした。落胆しながら、スマホで待ち時間の案内を見ると、0分〜90分で33人待ちと表示されている。嘘だと言いたい表示内容だ。その後も、申請用紙を手にした人が、次々と行列に加わっていった。待ち時間の案内を見て来た人もいただろう。結局、立ったままで1時間20分も待たされ、申請用紙を窓口で渡して、整理券をもらった。148番だった。

 整理券がもらえると、ようやく座ることができて、申請受付の順番を待った。ここまで待って疲れ果てているのか、あきれているのか、誰も文句を言っていない。みんな待っているから仕方ないということなのか、日本人は我慢強いのか。最終的に148番が呼ばれたのは12時10分だった。つまり、合計3時間10分も待ったのである。申請受付の担当の人に、思わず「こんなに待つのは耐えられないですね」と、共感を求めて話しかけてみた。申し訳ないとの返事がありつつも、「コロナの反動なのです。私たちも昨晩は22時30分まで働いていました」と吐露されてしまった。まるで被害者同士が意気投合して、申請手続きを終えた。

 順番待ちをしながら見当がついたのだが、パスポートセンターの「0分〜90分で33人待ち」とは、整理券の発行後の申請受付の人数を表示していたようだ。その手前の整理券待ちの人数は、アナログ状態の行列のため人数がつかめず、ホームページには表示されていない。そのため、実際3時間待ちが90分待ちに過小評価されてしまい、行列を増やしているのだ。もちろん、SNSを見るなど、もっと広範囲に調べていれば分かった話かも知れないので、自分も甘く見ていたとは思うが、導線設計が悪すぎるだろう。ホームページの表示から実際の申請受付までの導線を、利用者視点で見てくれれば、想定外の長期待ち時間で嫌な思いをする人を減らすことができるのだが……。

 なお、パスポートの交付日はたった1週間後。そこだけは想定以上に迅速なのだ。

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年07月20日 00時00分 更新

DX

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