市界良好 第135回

2023年7月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

質問と回答

秋山紀郎

 ユーザー企業の立場として、ITベンダーにシステムの提案依頼(RFP)を行う機会がある。このときの各社から寄せられる質問が興味深い。質問を1つひとつ読むと、どのような提案を考えているか、どこまで対象領域に詳しいかが分かる。丁寧に回答するよう努めることで先方の理解が深まり、良い提案に結びつくと思う。これはRFPにおいて大切なプロセスだ。しかし、中には、質問が1つも来ないベンダーもいる。興味がないのかなと感じてしまう。要件を理解しようとRFPを読み進めれば、質問の1つや2つ浮かぶのは当然だと思うのだが、質問が来ないなら提案もされないと思っていると、なぜか提案書は届く。ただ多くの場合、RFPの理解不足の提案書になっている。

 質問をするということは、その対象に興味や関心があるということである。セミナーでも同じことが言える。セミナー会場で登壇者に質問をするには勇気がいると思うが、どうしても聞いておきたいと思えば、手が挙がる。ウェビナーであれば、周囲を気にせず書き込むことができるため、より多くの質問が寄せられる。

 では、どのような質問が良いのか。質問が曖昧だと回答も抽象的になるが、質問フォームやQ&Aボックスに書かれているケースでは、具体的になっていることが多い。しかし、なぜそれを聞きたいのか、質問した背景が分からないと、どのような回答が良いのか迷うことがある。口頭で質問を受ければ、そのあたりを逆に尋ねられる。いずれにせよ、この質問と回答のセットによって、お互いの距離を縮めることができる。

 また、企業からの利用者アンケートに含まれる質問を読むと、その戦略をうかがい知れる。新店舗や新サービスの評価を知りたいものや、その分野における自社のシェアを知ろうとしているものもある。このように、満足度を知りたい、顧客の声を知りたいというアンケートは重要なのだが、問題が解決しなかったときに限ってアンケートが省かれてしまうことがある。これでは、満足度が高めに集計されるため、実態を歪めてしまうと感じる。アンケート回答を通じて、こちらからの改善提案を伝える機会がないと、やり場を失った感覚にもなる。

 初めて人と会ったとき、その距離感を縮めるにあたり、気を付けなければならないのは、YesまたはNoの短い回答で済む質問をなるべく避けることだろう。限定的な情報しか得られないため、対話の幅も深さも広がらない。「今日も暑いですね」と、Yesの回答をもらってから話題を広げる方法もある。しかし、Yesを期待して、例えば「コールセンターは忙しいですよね」と質問したが、「いいえ」と言われてしまって、空気が凍り付いた苦い経験をした人もいるだろう。最近の出来事や相手の専門領域など、快適に答えられる質問によって、対話を広げ、相互理解を深めることが重要だ。質問のセンスが問われるところである。

 コンタクトセンターでは、お客様からの質問にオペレータが回答するのが一般的だ。でも、お客様により良いサービスをすることに高い関心があるならば、一方的に聞かれるだけでなく、受信業務においてもオペレータからお客様に質問して良いだろう。

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年06月20日 00時00分 更新

おすすめ記事

その他の新着記事

  • スーパーバナー(リンク1)

購読のご案内

月刊コールセンタージャパン

定期購読お申込み バックナンバー購入