2022年1月号 <市界良好>

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

自然言語処理がすごい

秋山紀郎

 自然言語処理とは、人が話す言葉や文章をコンピュータで解析する処理である。コンタクトセンターでは、音声認識されたテキストの処理で使われており、形態素解析や構文解析もその1つである。また、ビジネスシーンにおいて、海外の論文やWebサイトを瞬時に和訳してくれるのは、とてもありがたい。まだ自動翻訳の精度が悪かったときは、それに頼らず英語の原文を読んでいた人も、今では、まずは自動翻訳にかけて日本語で概要を把握するという流れができているのではないだろうか。さらには、YouTubeの自動翻訳で日本語がテキスト表示されるのも便利だ。今まではまったく理解できなかった英語圏以外の動画であっても、意味は十分に分かる。これらのサービスは、無料で良いのだろうかと思うほどだ。

 これらの背景にあるのがAIだ。2018年10月に米GoogleがBERTという手法を発表し、文法構造の理解強化や教師データ不足の克服により「AIが人間の翻訳を超えた」と言われるようになった。また、ドイツのサービスであるDeepLも非常に優れており、日本語の方言も英訳する。しかし、AIは我々日本人の常識を知らないから「岸田さんは何代目の総理ですか?」を正しく英訳できない。また、非営利団体のOpenAIが、2020年6月にGPT-3という自然言語処理モデルを発表し話題になった。3行ほどの概要を入力しただけで、肉付けをして人間が作成したような自然な文章を生成してくれる。少しの指示文に基づき、プログラムのコード生成も自動でできるというから怖いとすら感じる。しかし、AIは本当の意味理解はしていないし創造的なことはまだできない。

 AIの研究成果は海外が多いと思うが、日本企業で要約をしてくれるサービスがある。Deep Learningを使った「ELYZA DIGEST」だ。ニュース、議事録、メール、対話、小説など、さまざまな文書形式に対応し、数行に要約してくれる。本来、ニュースや議事録は、短時間で内容が伝わるように人が文章を作成する必要があるため、要約AIに頼る状況はあまり好ましくない気がするが、メールや対話の要約は、時間短縮につながる。一方、小説の要約は、利用者にとっては便利だと思うが、作者にとってはうれしくないだろう。いま、“ファスト映画”が問題になっている。作品をもとにストーリーを把握できるようナレーションを入れたダイジェスト映像を作る行為だ。現在は手作業のようだが、将来はAIが作成してしまうのだろうか。映画制作会社の許可を得ずに作成し、YouTubeにアップロードする行為は犯罪である。文章の要約AIは有益だが、映像作品の要約AIは必要ないと言いたい。

 前述の通り、AIは常識やその意味を理解しない。だからこそ、我々の常識を超えることができるのかも知れないが、自らの行為が違法か否かの判断はしてほしい。また、自動翻訳においても、原文に相手を傷つけるなどの不適切な表現であれば、ブロックしてほしい。これらが実現すれば、自動翻訳を介したコンタクトセンター応対が可能になる。つまり、世界中の顧客とリアルタイムに母国語でコミュニケーションができる。もはや言語は障壁でなくなり、コンタクトセンターの国際化の時代がやってくる。

2024年01月31日 18時11分 公開

2021年12月20日 00時00分 更新

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