コラム
第126回
新入社員で営業マンだった頃の上司は、売上目標が未達だと雷を落とし、達成すると大盤振る舞い。その感情の起伏の激しさにいつもドキドキしていた、わたちゃんです。まさしく昭和ドラマのような職場でした。
「価格弾力性」とは、商品やサービスの価格が変動した際に、その需要量(売れる数)がどれくらい変化するかを示す指標のことです。例えば、価格を少し上げただけで売り上げが大きく落ち込む商品は「価格弾力性が高い」といわれ、反対に価格が多少上がっても需要があまり変わらない商品は「価格弾力性が低い」とされます。この違いを理解することは、適切な価格設定を行い、利益を拡大するために非常に大切です。
一般的に、生活必需品は価格弾力性が低いと考えられています。例えば、米や牛乳などの日常的に必要なものは、多少価格が上がっても人々は購入し続ける傾向があります。一方、嗜好品であるチョコレートやアルコールなどは価格が上がると購入を控える人が増え、価格弾力性が高いといえます。しかし、同じ商品でも、置かれている状況や顧客のニーズによって価格弾力性は変化することも忘れてはいけません。例えば、コンビニで急ぎで買うペットボトル飲料と、山頂の自販機で買う同じ飲料では、利便性という付加価値により、後者の方が価格弾力性は低くなる可能性があります。企業は、単に商品の種類だけでなく、顧客体験(CX)を向上させることで、価格変化に対する顧客の感じる価値を高め、価格弾力性を抑えることもできるのです。
価格弾力性は「価格弾力性=需要の変化率(%)÷価格の変化率(%)」という計算式で算出します。例えば、あるコンビニエンスストアが定番商品の値段を10%高くした結果、需要が4%減った場合、価格弾力性は「4%÷10%=0.4」となり、価格弾力性が低いと判断できます。反対に、動画配信サービスが月額料金を大幅に値下げしたところ、加入者数が大きく増えたケースでは、価格弾力性が高くなるでしょう。
スーパーマーケットでは、この価格弾力性を活用して、価格戦略の最適化を図っています。低弾力性の必需品は、多少の値上げでも利益を確保しやすく、高弾力性の嗜好品は、値下げによって販売数を伸ばす戦略が有効です。また、割引キャンペーンの効果測定や、新商品の価格設定、在庫管理と廃棄リスクの軽減など、さまざまな場面で価格弾力性の知識が役立ちます。ただし、安易な値下げは「チェリーピッカー」と呼ばれる価格に敏感な顧客ばかりを集めてしまい、長期的な利益につながらない可能性もあるため注意が必要です。また、値下げの効果も、下げ幅によっては逓減していくことも考慮する必要があります。
ということで、くだんの上司は、感情に対する売上弾力性が高い上司だったと分かりました。売り上げが少しでも下がると感情が大きく変動していたからです。そうなると、カミさんは感情の給料弾力が大きいということかな。給料が1%でも減ったら、怒り度合いが10%くらい高まりそう……って、これはやっかいだ!

2025年07月20日 00時00分 公開
2025年07月20日 00時00分 更新