コラム
第127回
お医者さんの前では従順になる、わたちゃんです。最近はほぼ毎日運動していて血圧も安定しているので、「僕は昔みたいに毎日飲んだくれてません!! もう降圧剤を飲まなくていいんじゃないですか?」と言いたいところですが、「このまま薬を続けてキープしましょう」と、言われると反論できなくて、素直に「はい。がんばります」と返事してしまいます。なんなんですかね。
さて、この「なんなんですかね」という感覚。実は、医療の世界で最近注目されている「Patient Experience」、略してPXに少し関係があるかもしれません。PXとは、日本語では「患者経験価値」と訳されることもあり、患者さんが受診や入院といった医療サービスを受ける中で経験する、診察、移動、食事、手術など、すべての事象を評価する指標です。
これまで医療機関の評価には「患者満足度(PS)」が用いられることが一般的でした。PSは、患者さんが持つ期待と実際のサービスのギャップによって左右される抽象的な概念です。一方、PXは具体的な「経験」を評価するため、より客観性が高い概念とされています。また、PSの尺度は標準化や信頼性・妥当性が課題でしたが、PX尺度は科学的な検証がされています。このため、PXは「PSの進化形」とも言われています。
なぜPXが注目されるようになったのでしょうか? PXは、医療の質の中核特性である「患者中心性」の質指標であり、評価の主体は患者です。患者中心性とは、「患者の意向・ニーズ・価値を尊重した医療の提供」です。PXに関するエビデンスも多く蓄積されており、患者行動への影響が報告されています。さらに、退院後の受診や入院といった医療リソースの利用、病院スタッフの離職、そして病院の財務実績とも関連することが報告されているのです。だからこそ、PXは集団の健康、最適な医療費と並んで「医療の質の3つの大目標」に掲げられるほど重視されています。欧米では政府主導でPX調査が広く実施され、医療機関の認証や診療報酬制度にも利用されています。欧米の医療機関の経営トップの約90%が「PXは最優先課題の1つ」と回答しているという調査結果もあるほどです。
国内でもPXへの取り組みが進んでいます。例えば、国民健康保険 小松市民病院では、外来・入院患者へのPXサーベイを実施し、その結果を基にさまざまな改善に取り組んでいます。患者さんやスタッフからの「ありがとう」を集める「ありがとうBOX」の設置やPX letterの発行、院内案内板の改善、PXサーベイで評価が低い食事の提供方法や内容の見直し(地元食材、セレクト食、メッセージカード) などを行っています。
ということで、次回の診察では勇気を絞って、今のライフスタイルを説明して薬を減らす相談をしてみます。でも、あの白衣姿を見るとどうしても萎縮してしまうんです。「PXの第一歩は、まず白衣を脱ぎ捨てることだ!!」とか、わけのわからない主張をしてみようかな。

2025年08月20日 00時00分 公開
2025年08月20日 00時00分 更新