コラム
第125回
毎日せっせとジムに通う「わたちゃん」です。すると最近、ご近所のご婦人たちの間で、なんとも穏やかならぬ噂が立ち始めました。曰く「あそこの旦那さん、奥さんを働かせて自分は毎日ジム通いしてる」と。朝5時から仕事をし、合間にオンライン会議をこなすこの身としては、釈明するのもなんだか野暮。「ええ、カミさんのおかげでただいま絶賛ヒモ男ライフを満喫中!」なんて開き直ったら、プチ炎上待ったなしです。
炎上マーケティングとは、わざと批判や非難を浴びるような過激な言動やプロモーションを行い、世間の関心を集めて認知度向上や販売促進につなげる手法 です。「炎上商法」「炎マ」とも呼ばれます。短期間で多くの人の目に触れるため、広告費を抑えられる可能性もある点がメリットとして挙げられます。
しかし、この手法はまさに「諸刃の剣」です。一歩間違えれば、企業イメージの著しい悪化、顧客離れ、さらには法的問題に発展するリスクも孕んでいます。消費者は批判的な企業に対して反感を抱きやすく、一度損なわれた信頼を取り戻すには長い時間を要します。
過去には、ルーマニアのチョコレート菓子メーカー『ROM』が、パッケージデザインを自国の国旗からアメリカ国旗に変更するという挑発的なプロモーションで炎上。その後、すぐに元のデザインに戻し、ジョークであったと発表したことで大きく注目され、売り上げを伸ばした成功例があります。また、奈良県の公式マスコットキャラクター「せんとくん」も、斬新なデザインが批判を浴びて炎上したものの、結果的に知名度を上げ、大きな宣伝効果を得ました。しかし、成功例はごく稀であり、多くは失敗に終わっています。例えば、あるデジタルサイネージ広告が「今日の仕事は、楽しみですか」というメッセージを掲示したところ、「頑張っている人を傷つける」といった批判が殺到し、わずか一日で取り下げられました。人気アーティストが活動に関する意味深な告知でファンを不安にさせたものの、実際はコンサートツアーの発表だったという事例では、安心感を与えた半面、多くの反感を買う結果となりました。
近年では意図しない炎上も多発しています。SNSでの些細な誤爆や従業員による不適切な投稿、企業の不祥事、利用者の迷惑行為など、さまざまな要因で炎上は起こり得ます。その大きな原因は「リテラシー不足」です。企業は、SNSの利用に関する教育・研修、運用マニュアルの策定、投稿前のダブルチェック、ソーシャルリスニングツールの導入など、炎上を未然に防ぐための対策が不可欠。万が一、炎上してしまった場合には、迅速な原因究明と初期対応、関係各所との情報共有、そして真摯な姿勢での対応が重要になります。
ということで、僕の噂も間違った炎上に向かうとカミさんにも迷惑かけるので、早めに火消しをしたいと思います。「実は僕は芥川賞を狙っている小説家で、家にいると気が滅入るのでジム通いしてるんです」とか言ってみようかな。よけい炎上するかな。
2025年06月20日 00時00分 公開
2025年06月20日 00時00分 更新