顧客視点でみるカスハラ対策

2025年6月号 <Discussion/座談会>

座談会 <顧客視点でみるカスハラ対策>

「切電」の前提はCX重視の姿勢
“顧客視点”“安全な職場”のバランスを取る

「カスハラ対策」の気運は最高潮に達しつつある。しかし、「顧客」の言い分に耳を傾けた上で、現場要員の心理的安全性も高めることは可能なのか。運輸、通信販売、食品メーカーという3業態を代表するキーマンに現段階でのマネジメントの取るべき姿勢や対応について聞いた。

<出席者>(順不同)

恩田 和典 氏
恩田 和典
首都高速道路
CS・サステナビリティ推進部
サステナビリティ推進企画課
課長
1995年入社。保全部門や営業部門、CS部門を経験。24年7月、CS・サステナビリティ推進部の筆頭課長に就任。カスタマーハラスメント対応からサステナビリティ推進まで、部内の幅広い施策を統括する。
和田 鯉宇 氏
和田 鯉宇
アスクル
カスタマーサービス本部
お客様相談室 室長
大手エステティックのお客様相談室長を経て2013年アスクル入社。2014年お客様相談室長に就任。苦情対応責任者のかたわら、コールセンター委託先へ苦情対応研修を実施。ACAPのISO10002事業グループ企画・普及チームメンバー。
天野 泰守 氏
天野 泰守
プレジィール
お客様相談室 室長
1981年カルビー入社。営業責任者を経て、お客様相談室へ異動。その後は7年間にわたり同室長を務め、社内外問わず菓子業界の顧客対応の向上に貢献。2015年、日本菓子BB協会(ベター・ビジネス協会)に出向。翌16年、同協会常務理事に就任。現在は、同協会のアドバイザーの傍らプレジィール社でお客様相談室の構築に携わる。

<モデレータ> コールセンタージャパン編集部

──カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の状況を聞かせてください。

恩田 首都高速道路では、2023年5月に策定した「切電マニュアル」(図1)を、2024年10月に公表しました。お客様のあらゆる声に対応を続ける方針には変わりませんが、訴訟にまで発展したカスハラ行為に勝訴したのを機に、不当要求で疲弊する現場の負荷もまた重視すべきと考えるようになりました。その結果のひとつが、切電マニュアルの作成です。毅然とした対応という方針を実践するためのルールを明文化し、現場が安心かつ継続的に対応できる体制を実現しました。

図1 首都高速道路の切電マニュアルの一部
図1 首都高速道路の切電マニュアルの一部

和田 私は、エステ業界でのお客様対応を経て、アスクルのお客様相談室で室長を務めています。理不尽なクレームへの対応策は、かなり以前から取り組んできましたが、2022年12月に正式に「カスハラ対応基準」を作成しました。このためにまず、コンタクトセンターの委託先のコミュニケータ(オペレータの呼称)約400名を対象に調査を行い、実態を把握しました。その結果を「時間拘束型」「正当な理由のない過度な要求型」などに分類し、実際のフロー化、リスト化、研修などを実施しています。さらに、カスハラとして3段階のレベルを設定。CRMデータに記録するなど、適切な対応の可視化と判断材料にしています。

天野 長年、菓子業界でお客様対応に携わっています。現在は、菓子メーカーのプレジィールでお客様相談室を担う傍ら、日本菓子BB(ベター・ビジネス)協会でも、アドバイザーとして菓子業界でのカスハラ対策への取り組み活動をしています。菓子業界は、比較的クレームが発生しやすい特性(概ね安価で多くの人に食べられる)があります。(BB協会では)従来から過度な要求に対して明確な線引きを行う方針を掲げています。また、業界内の事例の共有を推進し、過去の事例を踏まえた対応マニュアルの普及にも注力しています。実際の対応体験をもとに、協会版のカスハラ対応マニュアルで、現場と管理部門が連携しやすいルール整備と支援体制の強化を進めています。

判断基準作りと平行して
「声をあげやすい」環境を作る

──カスハラ対策の最初の壁は、定義作り、つまり“線引き”と言われています。

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会員限定2025年05月20日 00時00分 公開

2025年05月20日 00時00分 更新

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