コラム
第25回
地上数千メートルの高高度を飛行する機内は、調整をかけているとはいえ、気圧の変化で耳が詰まることがあります。大人はそれを「抜く」手段を知っていますが、赤ちゃんはその術がわからず、機内で激しく泣いてしまうことがよくあります。そのようなとき、隣の席に忙しいビジネスパーソンが座っていたらどうでしょう。機内ではゆっくり休みたいと思っているのに隣で赤ちゃんに激しく泣かれてしまったら、どのような気持ちになるでしょうか。「赤ちゃんだからしかたがない」とはわかっていても、ついクレームをつけたくなる人もいるかもしれません。
「うるさくて眠れないから、何とかしてよ!」とお客さまからの申し出があったとき、CAとしてどのようなアレンジをするか、その対応方法の選択はとても大切です。
もし、「そのお客さまから離した方がよい」という判断のもと、赤ちゃん連れのお母さまを空いている席に移してしまったらどうなるでしょうか。今度はその移った座席周辺の方から、さらに大きなクレームがくるに違いありません。
もともとの座席で赤ちゃんが泣き叫んだのであれば我慢しますが、CAがわざわざ席を移してきて、隣で泣かれてしまったら、そのお客さまにとってはさらに大きな耐えがたい苦痛になってしまうからです。
この場合は、赤ちゃん連れのお母さまの席を移すのではなく、クレームをしてきたお客さまご自身に移動していただくのが正解であると、つねに後進にもその心づかいの表し方のスキルを伝えてきました。
何らかのクレームに対しての対応がいくつか考えられるとき、その中でどれを選択するかの判断はとても重要です。
会員限定2025年05月20日 00時00分 公開
2025年05月20日 00時00分 更新