⽇本旅⾏
今月のPOINTS!
■システム概要
旅行の問い合わせ、予約、変更、キャンセルに対応するコールセンターにおいて、ノンボイスチャネルを拡充。一元管理する基盤としてZendeskのカスタマーサービスソリューション『Zendesk Suite』を導入した。
■選び方のポイント
必要に応じてノンボイスチャネルを追加し、一元的に管理できる機能性が決め手となった。現場完結型の運用を前提としていたため、UIの簡便性、運用が軌道に乗るまでのサポートの手厚さも高評価の要素となった。
■使い方のポイント
オペレータ1人ひとりが習熟した状態で運用を開始できるよう、チャネルの拡充は段階的に実施。FAQサイト(ヘルプページ)、Web問い合わせフォーム、チャットボット、有人チャットの公開およびメールの順でノンボイスチャネルの一元管理体制を構築した。FAQ、チャットボットによる自己解決により、1日あたり102件の問い合わせを削減。さらに、対応時間が電話よりも短い有人チャットの活用促進により、応対業務全体の効率も大幅に向上した。
旅行に不測の事態はつきものだ。自然災害や体調不良など、計画していたスケジュールを変更したり、キャンセルせざるを得ないことがしばしば起こる。新幹線と宿泊をセットで提供する国内旅行パッケージ「赤い風船」などツーリズム事業を展開する日本旅行の予約センターは、旅行の予約・変更・キャンセルなど、さまざまな問い合わせに対応している。
同社は、2021年より、親会社であるJR西日本と連携して「デジタルツーリズムの推進」を掲げ、商品販売の基軸を店舗からWebへと移行。これに伴い、Web販売における唯一の顧客接点となる予約センターの強化が課題として浮上した。DX推進本部 デジタルイノベーション推進部 担当部長の佐野正樹氏は、「東京、大阪、福岡ほか、複数拠点で運営していたのですが、対応方針も運用システムも統一されていませんでした」と、当時の課題を指摘する。いずれかの拠点であふれ呼が発生しても、他の拠点が支援にまわることもできなかった。
旅行直前または旅行中の問い合わせは、つながらなかった場合、顧客は懸念を抱えたまま旅行することになり、CXを大きく毀損する。ツーリズム事業本部 システムトラベルセンター(東京予約センター) 課長の野口元彦氏は、「最小限の業務負荷で対応件数の最大化を図るべく、ノンボイスチャネルの強化・拡充に着手しました」と説明する。
同社がノンボイスチャネルの対応基盤として選定したのは、Zendeskが提供するカスタマーサービスソリューション『Zendesk Suite(以下、Zendesk)』だ。従来から運用しているメールも含め、必要に応じてノンボイスチャネルを追加し一元的に管理できる機能性、UIの簡便性や運用サポートの手厚さを評価した。「稼働状況に応じた設定変更など、最終的には現場での運用完結を前提として選定しました」(佐野氏)。
導入は、東京予約センターでスモールスタートし、現場の機能習熟度を確かめながら、機能の拡充および活用範囲の拡大を進めた(図)。具体的には、2022年11月に顧客向けのFAQサイト(ヘルプページ)を公開。2023年2月にWeb問い合わせフォーム、3月にチャットボットを公開。4月には有人チャットの公開およびメールをOutlookからZendeskに移行し、ノンボイスチャネルの一元管理体制を構築した。野口氏は、「オペレータのITリテラシーがバラついていたため、コンタクトチャネルは1つずつ導入して1人ひとりが確実に習熟できる期間を設けました」と説明する。
導入後は、ノンボイスチャネル利用促進を図るため、SMSで誘引を図るなど、導線の整備に注力。結果、問い合わせ割合は6カ月後の23年12月には「電話40:ノンボイス60」とノンボイスへのシフトを達成した。FAQ、チャットボットによる自己解決により、1日あたり102件の問い合わせを削減。加えて、有人チャット対応の1件あたりの対応時間は、電話対応の約半分であることから、応対業務全体の効率も向上した。
また、自然災害時のあふれ呼解消策として、メールのオートリプライ機能を活用。23年8月に台風で交通機関がマヒした際、旅程が重なる約8000人の顧客に対処策を記載したメールを自動送信したことで、呼量を平常通りに抑制できたという。
23年5月に名古屋、8月に大阪、12月に全拠点での運用をスタートし、現在は生成AI活用によるメール対応業務の効率化に取り組んでいる。具体的には、生成AIで問い合わせ内容を要約。さらに、オペレータが作成した回答に肉付けしたり、文章のトーンを統一させることで、返信文の作成時間を短縮した。クレームなどへの返信文作成時間も短縮され、オペレータの精神的負荷軽減にもつながったという。
2024年10月、同社はJR西日本とのデジタルツーリズム推進取組みの一環として「tabiwaトラベル」の運営を開始。西日本エリアへの旅行を中心とした販売拡大に伴う問い合わせ増が見込まれる。今後は、AI活用を拡大し、自己解決の促進、応対業務の効率化に取り組む。
会員限定2024年11月20日 00時00分 公開
2024年11月20日 00時00分 更新