AgeWellJapan CAWO/Age-Well Design Lab 辰巳 裕亮 さん

2024年12月号 <サービスのプロに聞く>

辰巳 裕亮 さん

AgeWellJapan
CAWO/Age-Well Design Lab
所長
辰巳 裕亮 さん

神奈川県平塚市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。卒業後、介護医療ベンチャーに入社。営業およびマーケティング業務に従事。その後、AR/VRの世界に魅了され、XRエンジニアスクールの立ち上げに従事。2020年8月、MIHARU(現AgeWellJapan)に参画。現在は、CAWOとしてAge-Well Designer 150名の採用と育成を担当。

シニアの心をほぐす若いスタッフを育成!
100の研修で磨く「褒める力」「提案力」

 65歳以上の高齢者が人口の約3割を占める、超高齢社会。シニアがイキイキと過ごすことは、社会全体を明るくすることにつながる。

 AgeWellJapanは、シニア世代のウェルビーイングを実現する孫世代の相棒サービス「もっとメイト」を展開する。20〜30代のスタッフがシニア世代に、スマートフォンやパソコンの個別レクチャーや、散歩や趣味のお供をし、寄り添うことで好奇心を引き出す。

 辰巳裕亮さんはサービスの立ち上げメンバーの1人で、現在は150名におよぶスタッフの採用や教育を担当している。

 シニアサービスに特化したオリジナルの研修(ホスピタリティマナー、褒め力、ネガティブ切り返し)が特徴で、シニアにポジティブになってもらう具体的な声がけを教える。

 「若い人が、初対面の年配者とコミュニケーションをとることは難しさを感じるものです。価値観や生きてきた時代背景も違いますし、戦後を生き抜いてきたシニアは『人に迷惑を掛けたくない』という意識が強く本音を引き出すことも容易ではありません」(辰巳さん)

 新人研修では、「信頼関係構築5ステップ」をベースに、シニアとのコミュニケーションのポイントを解説。(1)出会い、(2)実験、(3)関係強化、(4)統合、(5)結束という5つのステップで心を開き、日々の不安や、やってみたかったことを引き出していく。

カギは共感と褒めること
豊富な研修で対話力を磨く

 利用者の多くは、最初は遠慮がちで、やりたいことを聞き出すことにも苦労する。「共感と褒めることがポイント」と辰巳さんは強調する。例えば、スマホの操作に自信がないシニアには、まず「iPhone使ってるんですか」「このアプリ使われているのすごいですね!」と褒める。不安をこぼしたら、汲み取って共感する。

 こうしたコミュニケーション力を磨くため、研修では、「人は褒められると心理段階がどう変化するのか」を論理的に解説したうえで、ロールプレイングで実践力をつける。

 「難しいことではなく、友達相手では自然にできているはず。無意識に行っていることを意図的に実践するために、研修では理論として理解したうえで、練習で再現性を高めていきます」(辰巳さん)

 30時間にわたる初期研修に加え、不足スキルを補うため任意で受けられる研修が94種類ある。

 シニアが口に出しがちなネガティブな一言に対する切り返しを学ぶ研修では、例えば、「もう残りの人生は短いし」という発言に対して、「〜で素敵だし、悲しいことを言わないで、一緒に楽しいことを探しましょう」といった具体的な言い回しを学べる。

 潤沢な研修でコミュニケーションスキルを磨けることがクチコミで拡がり、多くの若者が就業を希望する。採用は、倍率17%と狭き門だ。ホスピタリティの有無を見極め、「人に何かをして喜んでもらったことを、自分の喜びと感じる人材」を採用している。

CRMで顧客タイプを管理
相性の合うスタッフが担当

 いくらコミュニケーション力を磨いても、相性の問題は残る。サービスの利用者とは最初の打ち合わせで、価値観、趣味・特技、好きなこと、生活のルーティン、近所の人との関係などを細かく聞いてCRMに記録する。ヒアリングした内容からタイプを分析し、マッチするスタッフを担当につける。

 スタッフが、シニアから教わることも多い。「やってあげる」という縦の関係ではなく、お互いに教え合う横の関係を目指す。

 スマホの操作などを教え、成功体験を積むと、次々とやる気が芽を出し、新たな挑戦を重ねていく。次の挑戦を引き出す提案力もスタッフ達の強みだ。

 「最初はスマホでメールをしたい、ということを希望していたが、その目的を聞くと孫とのコミュニケーションでした。メールができるようになり、次はお家に呼ぼうと声をかけ、実際に孫が遊びに来ることになったケースもあります」(辰巳さん)

 スタッフ1人ひとりの創意工夫がサービスの価値を高めていく。「スタッフが財産」と言い切る辰巳さん。「ホスピタリティがお客様の幸せになり、自分たちの幸せになり、社会の幸せになることを目指しています」と笑顔で語った。

イメージ写真

2024年11月20日 00時00分 公開

2024年11月20日 00時00分 更新

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