コールセンター「DX化」の絶対条件 『シニアのデジタルシフト』講座 第30回

<コールセンター「DX化」の絶対条件 『シニアのデジタルシフト』講座・Web版> 第30回

倉橋美佳

実践編

第30回

法人向けサイトが取り組むべき、ユーザビリティ改善の考え方
〜アルコムの改善事例〜

シニアへのユーザビリティ改善の必要性は、BtoCビジネスだけではない。多くの中小企業の経営者・管理部門でも高齢化は進んでいるが、情報収集にWebサイトを活用することは日常的に行われているはずだ。このため、BtoBのビジネスであっても、シニアのユーザビリティを意識する必要がある。今回は防犯・監視カメラ専門販売のアルコムの事例から、法人向けサイトでのユーザビリティ改善について考察したい。

PROFILE
ペンシル 代表取締役社長CEO
倉橋美佳
2003年ペンシル入社。2016年代表取締役社長COO及び台湾現地法人台灣朋守有限公司の総経理に就任。2017年シンガポール現地法人 Digital Marketing Think Tank Pte Ltd を設立、代表就任。

 街中のいたる所で見かけるのが当たり前になった防犯カメラ。その市場規模は大きく、2021年度の販売高調査では3兆4000億円、2026年度には6兆円を超える(矢野経済研究所調べ)という、超成長産業となっている。

 英国の調査会社であるコンパリテックによると、2021年末で世界には10億台のカメラが設置されているとのことだ。導入台数が桁違いに多いのが中国で、世界のメーカーシェアの50%以上が中国企業である。監視社会といわれている中国だが、人口1000人あたりの防犯カメラ数は437台。人口総数で換算すると、なんと約6億台ものカメラが設置されており、日本の400倍以上ともいわれている。システムの進化も目まぐるしいため、設置検討には、より専門的な知識が必要となってきている。

 個人商店を含む中小企業が非常に多い日本では、購買品を「検討する担当者や経営者」もシニア層であるケースが大半のはずだ。検討する際に情報収集する方法は、取引会社からの引き合いもあると思うが、ほとんどは企業サイトを閲覧することになるだろう。

 シニア層の利用を念頭に入れた法人向けサイトでの一般的なポイントを次に列挙する。

◯シンプルな箇条書きなどでの情報伝達
 比較表を個別に作成できて、複数人で稟議確認を可能にする

◯実績など信頼が高まる情報提供
 具体的な導入事例や実績、また公共事業での導入事例による信頼性をアピール

◯購入フローとアフターサポート
 請求書対応などが必要なケースや導入後のアフターサポートなどについて、まとめて確認が可能

 営業担当との対面での打ち合わせや設置箇所の内見が必要な場合なども考えられる。法人向けの場合は個別対応も増えるため、購入検討のための問い合わせにつなげるだけでなく、その後のフォローをしっかりすることも求められるはずだ。実際に防犯カメラを販売するアルコム(福岡県福岡市博多区、賀来 泉代表取締役会長兼社長 CEO)の事例をもとに、サイト構築のポイントを検証する。

アルコムの具体的事例

 アルコムは、防犯カメラ、監視カメラを中心に販売している企業だ。法人向けだけでなく、家庭用・店舗用など幅広い商品販売の公式サイトを構築している。

 そこで、今回は具体的な改善事例を見ていく。

1、トップページから対象顧客の専用ページへと導線を明確化

 公式サイトのトップページは、法人顧客、個人購入者の両者が閲覧する。幅広い顧客層が利用しやすい配置から、法人顧客に向けた導線をFV(ファーストビュー)に目立つように入れることで、トップページから法人専用ページへの誘導数が増加した。シニア対応において重要な「ファインダビリティ(Findability)」の向上が、サイトを利用する全ユーザーの情報へのたどり着きやすさに作用した事例である。

法人様向けのバナー

2、電話問い合わせの案内をわかりやすく

 営業スタッフとのリアルタイムな商談を促した場合に受注率が高まるため、電話番号の記載をトップページFVの目立つ場所、かつ複数箇所表記に変更した。問い合わせでは、相談だけでなく見積もりや注文も受け付けてくれる。

 シニアが困った際に、問い合わせのコンタクトチャネルに電話を選ぶ傾向が高いことも意識しつつ、防犯カメラシステムのように、経験や知識が必要な分野の商品購入におけるフォローの重要性を考えると、コールセンターの対応は大事なポイントと言える。

トップページ内に複数箇所の電話連絡先案内

3、工事における不安の解消に対処方法を説明

 さまざまな小規模案件にも対応するため、大手ゼネコンでの導入実績ではなく、よくある問い合わせや対処方法を掲載し、課題に寄り添う内容にする。

 シニア層が抱えがちな不安感を解消しながら、信頼を高める情報伝達をすることが安心感を醸成している。

工事における不安の解消に対処方法を説明

4、強みを箇条書きでシンプルかつ簡潔に説明

 品質保証体制についてなど、アルコムの強みを箇条書きで記載し、稟議書や比較表に起こした際にもわかりやすくなるような掲載内容に変更する。

強みを箇条書きでシンプルかつ簡潔に説明

 上記のようなアルコムの具体的な改善ポイントから、トップページから法人専用ページへの誘導数の増加、ホームページの閲覧から問い合わせ数の増加などの効果が出始めている。これらのことから、シニア層を意識してユーザビリティの改善を行うことが、全ユーザーにとっても使いやすく、わかりやすいサイト構築につながっていることが理解できる。

 法人サイトの改善は、いかに自社を効率的にアピールし、直接的なつながりを作るかにある。そのため、前述したポイントをしっかりと押えて、ユーザビリティを改善することが望まれる。

2024年09月26日 18時00分 公開

2024年09月26日 18時00分 更新

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