Part.1 <現状と課題>
コールセンターでの生成AI活用の一丁目一番地となったのは、「VOCの要約」だ。オペレータの業務負荷軽減、ACW(対応後の後処理業務)の短縮や記録されるログの品質向上・平準化がもたらす効果は確かに大きい。また、人手不足が喫緊の課題なだけに、次いでチャットボットが耳目を集めつつあるが、生成AIの効果とは、コミュニケーションの自動化や省力化にとどまる存在ではない。使い方次第では、マネジメントやオペレーションの自動化も可能だ。実現の鍵を握り、かつ、より高い経営貢献もできる存在となりうる「SV」の業務改革を提言する。
コールセンターにおいては、生成AIの活用によってさまざまな業務の自動化が期待できる。大きく分けると、(1)オペレータの対応業務であるコミュニケーションの自動化、(2)FAQやレポーティング、VOC集計や分析などのオペレーションの自動化、(3)モニタリングや評価、シフト作成などのマネジメントの自動化の3領域だ(図)。
現段階では、(1)と(2)の一部に耳目が集まり、とくに人手不足解消のための(1)に対する期待値が大きいが、実は(2)と(3)の自動化がもたらす効果は相当に大きいと考えられる。とくに、コールセンター運営の肝心カナメとされるSV業務の支援や一部自動化は、その「人財」の有効活用を視野に入れれば、大きな経営貢献を生む可能性が高い。本特集では、SV業務の生成AI支援を軸に、SVのリスキリングまで提言する。
Part.2 <座談会>
生成AIはコールセンターのマネジメントをどのように変えるのか。Part2では、AI市場を代表する識者の野口竜司氏、三井住友信託銀行でグループ全体のコンタクトセンターに生成AI導入を推進する尾塩真平氏、LINEヤフーコミュニケーションズのAI運営部部長・個人でAIエバンジェリストとして活動する加藤敏之氏らで座談会を実施。生成AI活用の現在地と、コールセンターのマネジメント業務における活用の可能性、普及のトリガーを聞いた。
<出席者>(順不同)
<モデレータ> コールセンタージャパン編集部
──今日のテーマはコールセンターにおける「生成AI活用の現在地」「マネジメント活用の可能性」と、実現する具体的なアプローチです。自己紹介からお願いします。
野口 KDDIグループ内の生成AIスタートアップであるELYZAでCMO、三井住友カードでHead of AI Innovationを務めています。AIビジネスの推進や文系AI人材の育成など、AIの社会実装に向けて書籍や講演、研修などさまざまな情報発信をしています。
尾塩 三井住友トラスト・ホールディングスおよび三井住友信託銀行に所属しており、デジタル企画部 CX高度化プロジェクトチームで主任調査役を務めております。グループ全体のコンタクトセンターで生成AIをどのように活用し、高度化させるのか、研究・推進しています。
加藤 LINEヤフーコミュニケーションズAI運営部の部長です。AI運営部は、ビジネスユーザー向けに外販しているチャットボットやボイスボットなどのテクニカルサポートやカスタマーサクセスにおける活用、精度検証やアノテーションなどを行う部門です。私自身は、従来カスタマーサポートのオペレータ・SVを経験したこともあります。生成AIは社内研修や独学で学び、現在は、自部署のカスタマーサクセス、テクニカルサポートのスタッフに「生成AIとは何か」を教育する役割も担っています。
──現時点で、生成AIは社内のどのような業務で活用していますか。
2024年07月20日 00時00分 公開
2024年07月20日 00時00分 更新